調査概要

有限会社ユニバーサルワークスは、47都道府県・20政令指定都市の自治体公式サイトを対象に、「自治体サイトWebアクセシビリティ調査 2023」を実施しました。今年で21回目となる今回のテーマは「miCheckerなど3つのチェックツールを使ってみた」です。

世の中には、さまざまなウェブアクセシビリティチェックツールが存在します。ですが、チェックツールだけでウェブアクセシビリティ検証を完結させることはできません。デジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」によれば「チェックツールで見つけられる問題は、ウェブアクセシビリティの問題の2割から3割程度」とされていますし、ウェブアクセシビリティ基盤委員会が公開する『Q&A:試験における「miChecker」の利用』によれば、「試験において、「miChecker」はどのように利用すれば良いですか?」の問いに対し、

機械的にチェックできる部分については試験に「miChecker」を利用できますが、人でなければ判断できない部分については、「miChecker」のチェックとは別途、試験を実施しなければなりません。

https://waic.jp/qa/exam-michecker/

との回答が示されています。

加えて、各ウェブアクセシビリティチェックツールは、検証可能なコンテンツや検証基準、検証結果の示し方が異なっています。このことからも、特定のツールのみの結果に基づいてアクセシビリティが確保されたと判断するのは望ましいことではありません。

そこで、今回の調査では、総務省が公開しているmiCheckerを含めた複数のチェックツールを用いて各自治体サイトをチェックしました。その結果に目視評価を加えることで、チェックツールごとの差異や、チェックツール全体として適正な評価を得にくい部分を明らかにしたいと考えたものです。

調査方法

47都道府県・20政令指定都市の公式サイトトップページを、axe DevTools、Lighthouse、miCheckerの3つのチェックツールによって評価し、合わせて評価者(視覚障害者および健常者)が閲覧し、以下に示す内容に沿ってまとめました。

調査期間

2023年8月18日~8月31日

調査機関

有限会社ユニバーサルワークス(静岡県三島市・代表取締役 清家順)

調査対象

都道府県及び政令指定都市の公式ウェブサイト

調査に用いたチェックツール

axe DevTools

名称・バージョンaxe DevTools(Pro) Ver4.62.0 – axe-core Ver.4.7.2
使用した機能「Scan ALL of my page」を用い、問題検出数(TOTAL ISSUES)を記録
詳細・入手先axe DevTools – Web Accessibility Testing

Lighthouse

名称・バージョンLighthouse Ver11.0.0
使用した機能「Lighthouse Report Viewer」を用い、Accessibility のスコアを記録
詳細・入手先Lighthouse

miChecker

名称・バージョンmiChecker Ver3.0.0
使用した機能「アクセシビリティ検証・音声ユーザビリティ視覚化」を実行し、概要レポートの4観点のスコアを記録
詳細・入手先みんなのアクセシビリティ評価ツール:miChecker (エムアイチェッカー)Ver.3.0

調査結果ページの記載事項

チェックツールによる検証結果

  • axe DevTools 問題検出数 (最良値:0)
  • Lighthouse スコア (最良値:100)
  • miChecker 総合評価 (「悪い」「良い」「非常に良い」のいずれか)
  • miChecker(知覚可能)スコア (最良値:100)
  • miChecker(操作可能)スコア (最良値:100)
  • miChecker(理解可能)スコア (最良値:100)
  • miChecker(堅ろう(牢))スコア (最良値:100)

評価コメント

各団体の調査結果ページには、評価者(視覚障害者および健常者)が実際に、各コンテンツを閲覧し、チェックツールによる評価結果の考察、目視評価との乖離点、ウェブアクセシビリティ方針や試験結果への疑義や要望、今後の取り組みを進める中で優先してほしいことを「評価コメント」として記しています。

多くの自治体でウェブアクセシビリティに対する継続的かつ実践的な取り組みが進められていますが、この調査がウェブアクセシビリティへの更なる取り組みの推進に寄与できれば幸いです。

自治体サイトWebアクセシビリティ調査2023を終えて

お待たせしました!自治体サイトWebアクセシビリティ調査2023の発表です。先月創業20年を迎え、この調査は21回目になりました。都道府県と政令指定都市の公式サイトの横並び調査が毎年定期的に継続できたこと、その結果を自治体の情報発信の改善につなげてこれたことに感謝しています。

今年は、「miCheckerなど3つのチェックツールを使ってみた」をテーマに調査をしました。結果の詳細は調査結果のページに譲ることにしますが、3つのチェックツールによる結果には一貫性がないことがわかりました。このことから、チェックツールによる結果だけで評価を確定することはあやうい、しかし問題点の洗い出しには有効であろうという結論に至りました。

これまで、全盲の視覚障害者の私は耳による調査を担ってきました。見えればちゃんとわかることも「聞こえないからだめです」と言わなければならず、心苦しい思いで続けてきました。でも、チェックツールの結果が問題の洗い出しに有効であるように、見えない私の耳もアクセシビリティの評価ツールの一つにはなれていたのだろうと実感したところです。

毎年、調査後のコラムでは、調査をしながら感じたことを書いています。今年はお盆休みに台風が直撃しました。自治体のみなさんは、災害対応や情報発信に追われたことでしょう。それらの検証を含め、今年は災害対応のページに注目して見たいと思います。

自治体サイトにおける災害対応ページの実情

災害対応ページはどこの自治体にも存在します。しかし、その分類や表現はさまざまです。アクセスしやすさや使いやすさの点で分析できるように実情をまとめました。見出しを追いながら確認してみてください。

災害対応ページの分類は適切か

分類の観点からは3つのタイプに大別されました。

あらゆる災害をてんこ盛りにしたポータルサイトタイプ、災害の種類ごとに乱立させるタイプ、有事と平時に分けるタイプです。どれがよくてどれがよくないということではありません。必要な内容が過不足なく備わっていること、閲覧者がスムーズにアクセスできることが大切です。

表現その1:くくる文言は適切か

表現の観点はさまざまに指摘できますが、まずはその文言が気になりました。

私もここでは「災害対応」とまとめましたが、そもそも「災害」という文言でくくることは適切だろうかと考えてしまいます。調査で出会った文言には、災害のほかに「防災」「気象」「緊急」「危機」「安全」「安心」などがありました。言葉の意味を確認して、示したい内容をくくる文言として適切かを考える必要がありそうです。

表現その2:くくられる内容は適切か

内容をくくる文言があればくくられる内容もあるわけで、これも実にさまざまでした。

私は悪天候を想定し、気象状況や避難所開設などの自治体の対応が示される個所を探したところ、災害対応と思われるページに盛り込まれる内容は多種多様であることがわかりました。気象、地震のほかには、気象が台風、大雨、土砂災害に、地震が津波や放射線に分かれる場合があり、火災、交通事故、最近ではミサイル、自治体によってはコロナ対応も含んでいました。ここまでのボリュームになると閲覧者の用途に応じた分類は必須でしょう。

表示する場所は適切か

悪天候を想定した私を安心、または納得させてくれるような情報に行き当たるまでにはいくつかの障壁がありました。

たとえば、緊急なので「緊急情報」を得ようとしてもすっと情報が出てこない。これと思うリンクラベルを選択して進んできたにもかかわらず、さらにクリックを迫られたり選択を要するページが現れたりすると、手数が多すぎて緊急時に平静でいる自信がありませんでした。緊急情報に関しては、上部に浅めに置いておくといいかもしれません。

内容が閲覧者の意図に合っているか

災害対応ページには、何年も前の災害の報告が新着情報として並んでいることがありました。それらのタイトルをいくつも読まされてやっとただいまの緊急情報が出てくることや、それらを散々読んでみたけれど結局求める情報はなかったということもありました。

今、災害に迫られて困っている私を助けようというのではなく、「災害対応をしていますよ」という発信側の都合を突きつけられているようで違和感を覚えました。私は悪天候を想定して閲覧していますのでこのような感想を抱きましたが、自治体にしてみれば報告も大切な情報でしょう。このような性質の違う情報をどのように表すべきかも考えどころです。

災害対応ページが崩れがちなわけ

なぜこのようなことになってしまうのか、2つの原因が考えられます。どちらも改善のためには時おりの精査が必要です。

ポータルサイトの罠

一つ目の原因はポータルサイトの罠です。これは災害対応ページに限ったことではありません。私は「その他問題」と名付けているくらい自治体サイトにはよくあるパターンです。

自治体サイトが扱う情報は種類も数も膨大です。必ず分類の必要が出てきます。多くはツリー形式で分類していきますが、枝が細かくなるにつれて分類しにくい情報が出てきます。すると「その他」というカテゴリをつくって処理してしまう。やがて放置され、死蔵されていくあれのことです。

自治体サイトにおける「ポータルサイト」というくくりは、聞こえはいいけれどこの「その他」というカテゴリと同じです。「特設サイト」も同じようになりがちです。運用・管理しているサイトに「ポータルサイト」や「特設サイト」と名付けたものがありましたら、どこかで一度内容を精査することをおすすめします。

平時の怠慢

もう一つの原因は、災害対応の情報ページが平時ではなく有事につくられることが多いことです。

有事に分類だのわかりやすさだの言っていられないという状況を察することはできます。とりあえずの情報を急いで届けようという思いは私にも伝わってきます。そこをせめるつもりはありません。しかし、とりあえずの情報が積み重なることで、分類や表現を乱していることを忘れてはいけません。有事が去って平時が来ましたら、ぜひこちらの精査もお願いします。

文書構造への意識、低下していませんか?

最後に、調査の全体をとおしてとても気になったことがあるので書き添えます。一時よりも文書構造、とりわけ見出しレベルが乱れています。一時よりもという肌感覚での表現しかできませんが、だからこそ気になってなりません。

都道府県や政令指定都市が導入しているCMSは、それなりには優秀です。ですから、あるタイミングで整えたサイトに情報を追加していく分にはそれほど乱れないと思われます。しかし、たとえば先に述べた再びのタイミングで作り上げたコンテンツ、ポータルサイトや特設サイトは乱れが目立ちます。

特設サイトだからと言って特別なルールで運用していいわけではありません。ウェブコンテンツをつくるときのルールは同じです。自治体サイトを構成するコンテンツである以上、すべてのページに正しい運用ルールを適応させてください。

特設サイトは特設しなければならない事情があるから作られるわけで、その分閲覧者も多いことが予想されます。そうしたページがルール違反をしていて情報が得られにくいとなっては、そもそもの公式サイト本体が整っていても信用は丸つぶれです。サイト全体の、個々のページの端々まで意識を働かせて運用しましょう。


ここ数年、自治体サイトのアクセシビリティは成熟しありがたく思うことが増えていました。しかし、今年は苦言でまとめるコラムになりました。

2年前、当社が所在する静岡県三島市のお隣の熱海市で、大雨をきっかけに大きな土砂災害が発生しました。あれ以来本降りの雨が怖いです。自治体サイトは住民の不安を解消する役割を担っていると思います。「見られるサイト」「見られるページ」づくりのご相談が多数寄せられますが、見られていますよ災害対応ページ。住民が必要とする情報を正しく表現できてやっと、自治体の側が見てほしいページのお話になるのです。

熊本市

直近のJIS試験は平成30年までさかのぼる。当時の試験結果には適合レベルと対応度が示されておらず、試験に関する問い合わせは市ではなく検査機関が窓口として記されていた。専門的・技術的な問い合わせであれば望ましいケースもあるだろうが、コンテンツに対して責任を持つべき市の市政としてはいかがなものか。

福岡市

カルーセルにあるスライドピッカーコントロール(カルーセル内の特定のスライドを選択表示するためのボタン群)に淡い色を用い、コントラスト比が1.9:1と極めて低い状態にある。テキストではないためJIS X 8341-3:2016には含まれない基準ではあるが考慮しておきたい。

北九州市

トップページのトピックス掲載記事は、タイトルテキストとサムネイル画像で構成されている。サムネイル画像の代替テキストは、タイトルテキストに「サムネイル画像」と付加しただけで画像の代替とはなっていない。miCheckerから「問題あり」の評価を受けないための処置にすぎないのではないかと疑ってしまう。

広島市

miCheckerの「知覚可能」スコアが84であり、千葉市とならび政令指定都市の中で最低の評価となった。トップページ内の一部領域にある画像の代替テキストが「画像1」「画像2」などと設定され、不適切な可能性があると評されたものである。画像とキャプションのみを更新するのではなく、代替テキストも見直す運用に改めるべきだ。

岡山市

トップページに「News」「Meet OKAYAMA」「Pickup」などの文字画像が置かれている。これらは日本語の文字列とともにh2要素で括られているうえ、ページ内で最も大きな文字サイズで描かれている。文書構造上も視覚表現上も見出しとして扱われていると考えられるのだが、代替テキストはなんと空である。発信者の意図がつかめない。

神戸市

トップページの、日本語の見出しに添えられた英語部分のコントラストが不十分な状態にある。発信者側には文字として読ませる意図は薄いかも知れないが、評価ツールはテキストコンテンツ=情報としてしか評価しない。あくまでもツールに過ぎないと捉えるか、正確な客観視の結果として尊重するか、それによってとるべき対応は変わるだろう。

堺市

axe DevToolsでの検出問題数43、miCheckerの「操作可能」のスコア88は、いずれも政令指定都市の中で最低。Lighthouseスコア74は、さいたま市に次いで2番目に悪い数値となった。全体としては、WAI-ARIAを含むモダンな記述なのだが、仕様に則らない属性を用いるなど正確さを欠いた記述が厳しい評価の原因である。

大阪市

カルーセルの各画像に対して、適正な代替テキストが設定されている。記されている文字を過不足なく記したうえで、画像内に含まれる視覚的情報も簡潔に反映しようという意図が見える。装飾画像の代替テキストを空にするといった基本に忠実な配慮が、サイト全体に渡って丁寧に施されている様子もうかがえる。

三重県

今回の調査で、miCheckerで「非常に良い」評価を得たのは静岡県と三重県のみであった。Lighthouseでは97、axe DevToolsで検出された問題は3と、ツール評価においては問題の少なさが際立った。提示される画像等はPCでの閲覧を前提としている印象を受けるので、スマートフォン向けの提示に関して質の向上を望みたい。

愛知県

直近のJIS試験結果として「適合レベルAAに一部準拠」が示されている。これは、達成基準Aをすべて満たしたうえで、達成基準AAの一部を満たしたことを意味する。達成基準ごとの詳細を確認したところ、「非テキストコンテンツの達成基準(適合レベルA)」の達成率が92%であった。これでは準拠とは言えないが、どういった試験だったのだろうか。

京都市

カルーセルに含まれる6つはすべてリンクであるが、このうちの3つの画像は代替テキストが空(alt=””)に設定されている。キャプション等も存在しないため、リンク先を想起できる情報が何ら存在しないことになる。これらは今回のツール評価の数値にも現れており、優先的に対応すべき点として認識してほしい。

名古屋市

すべてのページから利用可能な「言語選択パネル」が備わっているが、キーボード操作ではキーボードが当たらず操作ができないのが難点。もともと画像への依存度が低くテキストが多いため、自動翻訳との相性がよいつくりである。閲覧者の希望に添ったサイト利用に向けてキーボード操作への確実な対応を進めてほしい。

浜松市

ウェブアクセシビリティ方針を2023年5月1日に更新しているが、依然としてJIS X 8341-3:2010をベースにした記載内容になっていることを不思議に思う。黄色い文字に白い縁取り、白い背景に明るいオレンジや黄緑の文字など、サイト全体のトーンに比べてカルーセル内のコントラストの低さが目立つ。

静岡市

サイト自体のつくりに新しさはなく、公開されているウェブアクセシビリティ方針からも取り組みに対する積極性は感じられないのだが、ひとつひとつの代替テキストなど、運用の中で日頃からやっておくべきことに対する意識の高さを感じる。

新潟市

政令指定都市の中でLighthouseのスコアが下から4番目、axe DevToolsでの検出問題数も悪い方から3番目と厳しい結果となった。過去11年に渡る試験結果の公開、試験結果の正直な内容、試験で見つかった問題の早期修正など、誠実な対応と見受けられるので、今後も着実な改善を進めてほしい。

相模原市

3種のツール評価の結果は総じて良好であり、目視でも大きな問題は見受けられない。合わせて、直近5年に渡り毎年JIS試験結果が公開されている。しかし、ウェブアクセシビリティ方針に示される目標を達成する期限が「平成30年6月30日」に据え置かれていることを残念に思う。取り組み状況に合わせて適時に適切な方針を定めてほしい。

川崎市

axe DevToolsでの検出問題数がゼロと、横浜市と並んで最良の結果となった。ただ、実際のページを確認したところ、1ピクセル四方の透過GIFが用いられるなどの前時代的な記述が見られた。問題がない状態にするという取り組みを否定するわけではないが、より妥当な構造、より無駄のない記述に進んでいくことも必要だろう。

横浜市

Lighthouseで満点、axe DevToolsで検出された問題ゼロ、miCheckerでは4観点中3観点(操作可能、理解可能、堅ろう(牢))で満点と、今回使用した3つの評価ツールすべてにおいて高い評価を得た。ただし、キーボード操作において、AIチャットボットにフォーカスは当たるがその先に進めないようなので改善を期待する。

千葉市

miCheckerの「知覚可能」スコアが84であり、広島市とならび政令指定都市の中で最低の評価となった。恒常的なリンクのピクトグラムに対する「service_ico7.png」、お知らせ欄のバナーに対する「thumbnail2.jpg」といった多くの不適切な代替テキストが原因となっている。記事掲載時の操作・設定に見落としがないか確認が必要だろう。

さいたま市

Lighthouseでのスコアが67と、調査対象サイトの中で最も悪い評価となった。axe DevToolsでは、認識可能なテキストを含んでいないリンクが21箇所検出されるなど計39の問題が挙がっている。miCheckerでは満点ではないものの「良い」の評価であり、ツールによる評価基準の差異を考慮しながら改善に向けて検討していただきたい。

仙台市

画像上では、サイト名に加え、キャッチフレーズやサイトの役割などまでが記されているのに対して、代替テキストはサイト名のみとしているケースが多い。代替テキストはその名のとおり画像に記される内容の代わりになる情報となるべきであり、不用意な省略は好ましくない。

札幌市

毎年JIS X 8341-3:2016に基づく試験を実施、それを受けてウェブアクセシビリティ方針を更新という理想的なサイクルで運用がなされている。単に次年度末を目標達成期限として定めるのではなく、重要なページやアクセスの多いページを優先して修正することを表明している点も見逃せない。

沖縄県

Lighthouseで満点の結果を得た。ただ、新しい技術・仕様を正しく用いた結果というよりも、古い技術を大きな問題なく記述できているに過ぎない印象は否めず、さまざまな閲覧環境におけるユーザビリティという点においては向上の余地がかなりある。

鹿児島県

PDFのアクセシビリティ確保をしない理由に「アクセシビリティに配慮したPDFを作成できる環境がない」を挙げている。対応する人員を含めた運用体制を環境と称しているのか、単にAdobe Acrobatを所有していないことなのか判然としないが、後者だとすればウェブ担当部署だけでも購入するよう切にお願いしたい。

宮崎県

ウェブアクセシビリティ方針によると、JIS X 8341-3:2016の適合レベルAAを目標としている。実際のページの状況を見ると、基調色のオレンジよりも部分的に濃い色を用いるなどして非テキスト部分のコントラストを高めている様子が伺える。ツール評価の結果は良好とは言えないが、WCAG 2.1に目が向いていることは頼もしく感じる。

大分県

トップページの画像には「サムネイル用画像」「サムネイル画像」「注目情報サムネイル」と、画像の内容が全く反映されていない代替テキストが並んでいる。初期のダミーテキストを変更しないまま公開している懸念がある。もしそうであれば、早期にCMSの設定や運用マニュアルの見直しをする必要がある。

熊本県

トップページにはテキストと画像を合わせたリンクが多数配置されている。テキストが「○○」の場合、画像に記される内容に関係なくすべての画像に「○○の画像」と代替テキストが付いており安易ともとれる。何らかの代替テキストが付くことでツールによってはエラー検出される可能性が低くなるが、適切な代替テキストを付けようという意識がほしい。

長崎県

県独自のアクセシビリティガイドラインを定め、一部、JIS X 8341-3:2016を超える内容への対応を掲げている。ウェブセーフカラーや機種依存文字など、現在の閲覧機器・OS等の状況からすると意識する必要のないと思われる内容が含まれており、それが表現上の制約になってしまうことが懸念される。

佐賀県

axe DevToolsは問題検出数が47と、全国で2番目に多い結果となった。適合レベルAAが目標であることは示されているが、公開されている検査証明書では、ウェブページ一式の対応度ではなく検査対象ページごとに「達成度」なる独自の指標が示されており、読み取りが難しい。

福岡県

axe DevToolsの問題検出数が全国で4番目に多い結果となった。選択項目・非選択項目を色の違いだけで表現しており、グローバルナビゲーションのドロップダウンメニューでは十分なコントラストが確保されていない。色づかいに対する配慮が十分でない傾向がある。

高知県

Lighthouseで満点、axe DevToolsで問題検出数ゼロ、miCheckerでは知覚可能が96である以外すべてで満点と、調査対象の中で最良とも言える結果を得た。一方、「高知県ウェブアクセシビリティ方針」には、目標を達成する期限として2015年3月31日までと記されたままになっているなど、平成25年以降改めた形跡がないことは残念である。

愛媛県

miChcekerの4観点でひとつも100点を獲得することができなかったのは福井県とこの愛媛県のみであった。2017年に定められたウェブアクセシビリティ方針には「サイト全体のうち、以下については現時点で対象外とし、2018年度以降の対応」とあるが、2023年8月現在、対応が進んだ旨の表明はない。取り組みが停滞している印象は否めない。

香川県

Lighthouseのスコアが47都道府県中最下位の72に留まった。トップページにはX(旧Twitter)のタイムラインを埋め込んでいるが、香川県はTwitterをアクセシビリティ確保の対象から外す方針を示している。ページの一部分を除外する場合は部分適合となり、香川県が目標とする「準拠」の結果を得ることは不可能である。

徳島県

2022年度のJIS試験においては、検査機関の検定試験に合格した登録検査員が試験を実施した旨が記されている。適合レベルAA準拠の結果を得たようであるが、試験対象の各ページには各種SNSにシェアするボタン等が設置されており、フォーカスインジケータが視認できないものが含まれている。この点をどう判定したのかが気になった。

山口県

トップページの「知事室」「県の広報」等の領域は写真を背景に置き、前景にドロップシャドウを施したテキストが置かれている。通常時は辛うじてコントラストを確保しているように思えるが、サイトに備わる配色変更機能を用いると文字が読みづらい状態になってしまう。せっかくの機能がパフォーマンスに終わらないよう期待したい。

広島県

miChcekerの「知覚可能」のスコアが、福井県に次ぐワースト2の81であった。また、axe DevTools ではWAI-ARIAに関する問題が多種検出されている。本来用いる必要のない記述をしていないかを確認すべきだ。アクセシビリティを確保するのにWAI-ARIAが必須なのではなく、必要な場合にのみ用いるのだとの認識を持ちたい。

岡山県

公開されている試験結果を確認すると、適合レベルAの達成基準を満たしていないが、適合レベルAAに一部準拠が表明されている。達成基準1.1.1や1.3.2(ともに適合レベルA)について具体的な問題点を挙げていることから、適合レベルAを満足していないことを自認していると思われるので、記載は正しい内容に改めるべきである。

島根県

axe DevToolsで問題が検出されなかったのは、都道府県では島根県と高知県だけである。ただ、ツールで検出できない部分には問題があるようだ。画像の代替テキストには、画像に含まれるキャッチフレーズの省略や、画像に記されること以外の文言を代替テキストに付与するなど、代替テキストの過不足が確認された。

鳥取県

各ツールのスコアからも、毎年のようにJIS試験を実施し結果を公開していることからも、ウェブアクセシビリティに真摯に取り組んでいることが垣間見える。ただ、不揃いな要素配置、不均等な余白、一貫性のない配色など、視覚的な均整が損なわれていることで見つけにくさや読みにくさにつながる点があることを指摘しておきたい。

和歌山県

さまざまな部分のコントラストを計測すると、4.45:1や4.46:1といったコントラスト比の配色が確認できる。作成者は小数第二位を四捨五入した値(を表示する測定ツール)で確認し、基準を満たすと判断しているのかもしれないが、これは4.5:1以上とは認められないので認識を改めてほしい。

奈良県

ヘッダーのサイト内検索には選択肢が「ホームページ」だけのプルダウンメニューがあり、「メニュー」内のサイト内検索には「ホームページ」がラジオボタンとして置かれている。いずれも検索対象を絞り込むための要素だと思われるが、明らかに不要である。アクセシビリティ上もユーザビリティ上もメリットがないので削除が望ましい。

兵庫県

現在公開されているウェブアクセシビリティ方針では、目標を達成する期限を2017年3月31日と定めている。これは、現在のサイトにリニューアルされた2022年1月よりも前の日付であり、リニューアル後には方針を定めていないことになる。これを以ってウェブアクセシビリティの取り組みの停滞を示すものではないが、適時の方針策定・公開を望む。

大阪府

Lighthouseは満点の評価を得た一方、miCheckerの「操作可能」は対象自治体中ワーストの53の結果となった。減点対象は「!」をリンク先とするページ内リンクの不備1種なのだが、それらが9ヶ所もあることで大幅な減点となっている。これらのリンクはJavascriptによって制御されており、記述ミスの疑いがあるため要確認。

京都府

トップページにタイル状に配した画像で丹後・中丹・南丹・山城の広域振興局のエリアを表現しているが、当該地域の表示色が淡く、いずれもコントラスト比2:1を下回っている。それ以外にも低いコントラストやフォーカスインジケータの非表示が確認されることから、良好なツールの評価に反してアクセシビリティ上の改善点は多い。

滋賀県

トップページのカルーセルに並ぶ災害系のバナー2つは、そのいずれもコントラストが十分でない。災害時の情報発信に赤や黄色を用いることはよくあるが、問題の生じにくい文字色・背景色の組み合わせを規定しておきたい。滋賀県防災ポータルもかなり低コントラストであり見直しが必要である。

静岡県

Lighthouse と miChecker の2つで満点を得た唯一のサイト。一方で、axe DevToolsでは11の問題が検出されている。3つのツールの結果が一致していないことは、ツールだけではJIS X 8341-3:2016準拠と謳えないことを表していると言えよう。

岐阜県

「県政ホットニュース」には動画のサムネイルと思しき画像が並んでいる。中央に「 」(再生マーク)があり、その場で再生できるかのように見えるのだが、実際には下部のテキストからのみ記事ページがリンクされている。他サイトでの経験やセオリーに反する視覚的な提示は、利用者の期待を裏切る危険がある。

長野県

キーボード操作では、各ページ右下に配置されているチャットボットを呼び出すことができない。仮に何らかの方法で起動できた場合でも、質問の入力のみが可能で表示された回答からページを遷移することはできない。音声読み上げでも利用できない状況であり、閲覧可能な環境が限定されてしまっている。

山梨県

取組確認・評価表によれば、「毎年アクセシビリティに関する検証を実施し問題点を把握しており、来年度以降も実施する予定である」としている一方、「過去3年以内にアクセシビリティの実現内容について、最新のJIS X 8341-3:2016に基づく試験による確認を行っていない」とのこと。客観的な指標とすべく試験を実施されたい。

福井県

miCheckerの「知覚可能」のスコアが、他の調査対象はすべて80以上の中、福井県のみ大きく引き離された50に留まった。問題の多くは、画像の代替テキストと直後の同一テキストによるリンクが多数(19ヶ所)検出されたことにあるため、該当箇所の記述を改めるといいだろう。

石川県

トップページのaxe DevToolsによる評価において、id属性値の重複が10、li要素の記述ミスが11と、文法上の誤りが多く検出されている。id属性値の重複は、トップページのみならず他ページのヘッダーでも検出されている。ウェブサイト内のすべてのページに関わる事項なので早めに修正をかけたい。

富山県

「魅力・観光」と「観光・魅力」と「魅力・観光・文化」、「産業・しごと」と「しごと・産業」など、ラベリングのミスなのか、実際に異なるコンテンツなのかを判断しづらい部分が散見される。さまざまな検索方法の提供を試みた結果と思われるが、選びにくさにつながってしまっては本末転倒である。

新潟県

ページの先頭に「本文へ」のリンクが目に見える形で備わっている。それとは別に「メニューを飛ばして本文へ」が不可視の状態で置かれている。どちらもリンク先は「#skip」であり機能上の違いは見られない。意図したものではなく、構築業者が「いつも通りつけてしまった」のであれば早急な改善を望む。

福島県

トップページにおいて、CSS背景画像によってテキストを置換する手法が多用されている。HTML上では必要なテキストが記述されているとはいえ、画像が表示されなかった際は主要な見出しの多くが消失することになり情報を得ることが難しくなる。

山形県

トップページでは動画が再生される。一時停止可能、字幕を用意、静止画モードへの変更などいくつかの工夫が見られるが、一時停止ボタンには「pause」、音声再生ボタンには(音声が停止されている状態において)「mute」など、表記・表現の配慮が足りない印象を受ける。

神奈川県

トップページには目的の情報を「選んで表示する」機能がある。キーボードで操作すると変更を望んでいないにも関わらず「設定」にフォーカスが当たっただけで設定画面が表示されてしまう。設定内容を確認したところ、表示順の変更はキーボードではできないようだ。便利な機能だとしても、意図しないことが不完全な状態で表示されてはよくない。

東京都

トップページの画像の代替テキストは見直しが必要である。同じ大きさの画像を横に2つ並べ、両方の画像に渡るかたちで「新型コロナウイルス感染症に関する情報」と記しているが、それぞれの画像には「個人向け」「事業者向け」の代替テキストを設定している。これでは新型コロナに関する情報であることは伝わらない。

千葉県

ページ左上の県章(千葉県徽章)と白背景の組み合わせはコントラスト比5.1:1となる。この配色を文字部分に適用すればJISに定める最低限のコントラストを満足するのだが、実際の文字は県章よりも明るい青でコントラスト比4.6:1まで低下する部位がある。定められたコントラスト比を犯してまで得たい「違う青」の意義はいかばかりか。

秋田県

「外部サイト」や「外部リンク」と記されていても同一ウィンドウでリンクが開かれることがあれば、事前の予告なく別ウィンドウでリンクが開かれる箇所もあった。別ウィンドウでリンクを開く際に予告をすることはAAAに該当する達成基準であるが、一定のルールを設けたいところである。

埼玉県

トップページのイベント欄には、各記事にサムネイル画像が添えられている。代替テキストを適切に設定しようという意識は感じられるものの、「サムネ:○○」「○○バナー画像」「○○のロゴ画像です」など散漫な印象もある。代替テキストに関するルールを設けることをおすすめしたい。

宮城県

トップページに、バナーとサイト名のテキストを組み合わせた特設サイト等へのリンク集があるが、バナーの代替テキストが、空のもの、テキストとほぼ同様のものなど一貫性がない。各バナーにはキャッチフレーズや開催日などの情報が含まれているものがあるので、代替テキストに過不足のない情報を反映できるとよい。

群馬県

2022年12月1日になされたリニューアルでは、これまでよりも動画を前面に押し出している。それにも関わらず、リニューアル以降に実施されたJIS試験では、達成基準1.2.2・1.2.3・1.2.5など動画の評価に不可欠な基準を「対象なし」として、適用していない。適切な試験がなされたのか甚だ疑問に感じる。

岩手県

テキストのコントラストには一定の配慮がなされているようである。他方、ドロップダウン機能があることを示す下矢印、カルーセル内の前後スライドを表示させるためのボタンなど、非テキストのコントラストはコントラスト比3:1を下回るケースが散見される。JIS X 8341-3:2016には含まれない基準ではあるが考慮しておきたい。

栃木県

トップページの画像の代替テキストに丁寧さを欠く。「とちぎを知る、学ぶ。TOCHIGI Infomation」に対して「Information」、「新型コロナウイルス感染症に関する情報(ワクチン情報を含む)」に対して「コロナバナー」など、発信者が画像を区別するための最低限の情報程度にしか扱われていない印象を受ける。

青森県

スマートフォン向けの表示の際、ハンバーガーメニュー内にフォーカスが移ってもメニューが展開されない。この場合、メニュー内の項目が非表示のままフォーカスが移動することになり、一時的にフォーカスインジケータが消失してしまう。閲覧者が意図しないページ遷移を引き起こしかねず、好ましい状況とは言えない。

茨城県

昨年度末に試験を実施しているが、適合レベルと対応度が示されていない。現状のJISにはない「箇条8試験方法」の記載があったり、把握している問題点を記していなかったり、トップページに動画を掲載しているのに「動画コンテンツ」を対応に含めなかったりと、取り組み内容の表明の仕方に誠実さが感じられない。

北海道

カルーセルにあるスライドピッカーコントロール(カルーセル内の特定のスライドを選択表示するためのボタン群)が縁取りのない単色の円形で表現されている。それらは、スライドに重なって表示されており、スライド画像の色合いよってはコントラストが低下するおそれがある。