自治体サイトWebアクセシビリティ調査2023を終えて

2023年9月1日 掲載

お待たせしました!自治体サイトWebアクセシビリティ調査2023の発表です。先月創業20年を迎え、この調査は21回目になりました。都道府県と政令指定都市の公式サイトの横並び調査が毎年定期的に継続できたこと、その結果を自治体の情報発信の改善につなげてこれたことに感謝しています。

今年は、「miCheckerなど3つのチェックツールを使ってみた」をテーマに調査をしました。結果の詳細は調査結果のページに譲ることにしますが、3つのチェックツールによる結果には一貫性がないことがわかりました。このことから、チェックツールによる結果だけで評価を確定することはあやうい、しかし問題点の洗い出しには有効であろうという結論に至りました。

これまで、全盲の視覚障害者の私は耳による調査を担ってきました。見えればちゃんとわかることも「聞こえないからだめです」と言わなければならず、心苦しい思いで続けてきました。でも、チェックツールの結果が問題の洗い出しに有効であるように、見えない私の耳もアクセシビリティの評価ツールの一つにはなれていたのだろうと実感したところです。

毎年、調査後のコラムでは、調査をしながら感じたことを書いています。今年はお盆休みに台風が直撃しました。自治体のみなさんは、災害対応や情報発信に追われたことでしょう。それらの検証を含め、今年は災害対応のページに注目して見たいと思います。

自治体サイトにおける災害対応ページの実情

災害対応ページはどこの自治体にも存在します。しかし、その分類や表現はさまざまです。アクセスしやすさや使いやすさの点で分析できるように実情をまとめました。見出しを追いながら確認してみてください。

災害対応ページの分類は適切か

分類の観点からは3つのタイプに大別されました。

あらゆる災害をてんこ盛りにしたポータルサイトタイプ、災害の種類ごとに乱立させるタイプ、有事と平時に分けるタイプです。どれがよくてどれがよくないということではありません。必要な内容が過不足なく備わっていること、閲覧者がスムーズにアクセスできることが大切です。

表現その1:くくる文言は適切か

表現の観点はさまざまに指摘できますが、まずはその文言が気になりました。

私もここでは「災害対応」とまとめましたが、そもそも「災害」という文言でくくることは適切だろうかと考えてしまいます。調査で出会った文言には、災害のほかに「防災」「気象」「緊急」「危機」「安全」「安心」などがありました。言葉の意味を確認して、示したい内容をくくる文言として適切かを考える必要がありそうです。

表現その2:くくられる内容は適切か

内容をくくる文言があればくくられる内容もあるわけで、これも実にさまざまでした。

私は悪天候を想定し、気象状況や避難所開設などの自治体の対応が示される個所を探したところ、災害対応と思われるページに盛り込まれる内容は多種多様であることがわかりました。気象、地震のほかには、気象が台風、大雨、土砂災害に、地震が津波や放射線に分かれる場合があり、火災、交通事故、最近ではミサイル、自治体によってはコロナ対応も含んでいました。ここまでのボリュームになると閲覧者の用途に応じた分類は必須でしょう。

表示する場所は適切か

悪天候を想定した私を安心、または納得させてくれるような情報に行き当たるまでにはいくつかの障壁がありました。

たとえば、緊急なので「緊急情報」を得ようとしてもすっと情報が出てこない。これと思うリンクラベルを選択して進んできたにもかかわらず、さらにクリックを迫られたり選択を要するページが現れたりすると、手数が多すぎて緊急時に平静でいる自信がありませんでした。緊急情報に関しては、上部に浅めに置いておくといいかもしれません。

内容が閲覧者の意図に合っているか

災害対応ページには、何年も前の災害の報告が新着情報として並んでいることがありました。それらのタイトルをいくつも読まされてやっとただいまの緊急情報が出てくることや、それらを散々読んでみたけれど結局求める情報はなかったということもありました。

今、災害に迫られて困っている私を助けようというのではなく、「災害対応をしていますよ」という発信側の都合を突きつけられているようで違和感を覚えました。私は悪天候を想定して閲覧していますのでこのような感想を抱きましたが、自治体にしてみれば報告も大切な情報でしょう。このような性質の違う情報をどのように表すべきかも考えどころです。

災害対応ページが崩れがちなわけ

なぜこのようなことになってしまうのか、2つの原因が考えられます。どちらも改善のためには時おりの精査が必要です。

ポータルサイトの罠

一つ目の原因はポータルサイトの罠です。これは災害対応ページに限ったことではありません。私は「その他問題」と名付けているくらい自治体サイトにはよくあるパターンです。

自治体サイトが扱う情報は種類も数も膨大です。必ず分類の必要が出てきます。多くはツリー形式で分類していきますが、枝が細かくなるにつれて分類しにくい情報が出てきます。すると「その他」というカテゴリをつくって処理してしまう。やがて放置され、死蔵されていくあれのことです。

自治体サイトにおける「ポータルサイト」というくくりは、聞こえはいいけれどこの「その他」というカテゴリと同じです。「特設サイト」も同じようになりがちです。運用・管理しているサイトに「ポータルサイト」や「特設サイト」と名付けたものがありましたら、どこかで一度内容を精査することをおすすめします。

平時の怠慢

もう一つの原因は、災害対応の情報ページが平時ではなく有事につくられることが多いことです。

有事に分類だのわかりやすさだの言っていられないという状況を察することはできます。とりあえずの情報を急いで届けようという思いは私にも伝わってきます。そこをせめるつもりはありません。しかし、とりあえずの情報が積み重なることで、分類や表現を乱していることを忘れてはいけません。有事が去って平時が来ましたら、ぜひこちらの精査もお願いします。

文書構造への意識、低下していませんか?

最後に、調査の全体をとおしてとても気になったことがあるので書き添えます。一時よりも文書構造、とりわけ見出しレベルが乱れています。一時よりもという肌感覚での表現しかできませんが、だからこそ気になってなりません。

都道府県や政令指定都市が導入しているCMSは、それなりには優秀です。ですから、あるタイミングで整えたサイトに情報を追加していく分にはそれほど乱れないと思われます。しかし、たとえば先に述べた再びのタイミングで作り上げたコンテンツ、ポータルサイトや特設サイトは乱れが目立ちます。

特設サイトだからと言って特別なルールで運用していいわけではありません。ウェブコンテンツをつくるときのルールは同じです。自治体サイトを構成するコンテンツである以上、すべてのページに正しい運用ルールを適応させてください。

特設サイトは特設しなければならない事情があるから作られるわけで、その分閲覧者も多いことが予想されます。そうしたページがルール違反をしていて情報が得られにくいとなっては、そもそもの公式サイト本体が整っていても信用は丸つぶれです。サイト全体の、個々のページの端々まで意識を働かせて運用しましょう。


ここ数年、自治体サイトのアクセシビリティは成熟しありがたく思うことが増えていました。しかし、今年は苦言でまとめるコラムになりました。

2年前、当社が所在する静岡県三島市のお隣の熱海市で、大雨をきっかけに大きな土砂災害が発生しました。あれ以来本降りの雨が怖いです。自治体サイトは住民の不安を解消する役割を担っていると思います。「見られるサイト」「見られるページ」づくりのご相談が多数寄せられますが、見られていますよ災害対応ページ。住民が必要とする情報を正しく表現できてやっと、自治体の側が見てほしいページのお話になるのです。