調査概要

有限会社ユニバーサルワークスは、「自治体サイトWebアクセシビリティ調査 2020」を実施し、47都道府県・20政令指定都市の自治体サイトのアクセスしやすさを評価しました。今年で18回目となる今回のテーマは「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」です。

2020年1月に国内初の感染者が確認された新型コロナウイルス感染症は、半年以上経過した現在も収束に至っていません。これまで、地方公共団体や各首長(知事・市長)は、さまざまな手段で感染拡大防止、新生活様式への対応など、新たな「Withコロナ」「Afterコロナ」時代に向けたメッセージを発信し続けています。ですが、ウェブメディアを通じて発信された情報が、現状、必ずしも『「みんな」に伝わるWebコンテンツ』になっていないのではないかと感じています。

今回は、各団体の開設する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」対策コンテンツから、日々の感染状況に関する情報や首長が発する動画について、ウェブアクセシビリティ上の配慮状況を調査しました。

調査方法

47都道府県・20政令指定都市の公式サイト内に設けられた「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」対策コンテンツを閲覧し、表示されたページが持つ機能・内容・表現を確認しました。

基準を定めるにあたって

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報提供は、誰に向けて、どんな情報を、いつ提供されることが望ましいのか定まっていない状況にあると感じています。本調査を実施するにあたり、内容や表現の適否、良し悪しを示すのは適当でないと考えましたが、より多くの人々が、より多くの環境や機器から、スムースに情報にアクセスできることは、安心・安全な暮らしを送るうえで極めて重要なことと捉えています。

本調査は、各団体のコロナ情報発信に関する総合的な優劣を云々するものではありません。現在の状況を集約することによって、よりアクセスしやすく、よりわかりやすいウェブコンテンツとするための一助になればと考えています。

調査内容・観点

調査内容や観点・基準は以下のとおりです。

  • ページタイトル
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策コンテンツの名称です。同団体内に複数の集約サイトが認められた場合には、もっとも広範な情報を含むページを対象コンテンツとしています。
  • 開設先・格納先
    対象コンテンツが、公式サイト内のどの分野に置かれているのか、公式サイトとは異なる独立したサイトなのかの別を示しています。原則として、トピックパス(パンくずリスト)の上位階層を格納先と見なしており、公式サイトのデザインや構成を踏襲している場合でも、グローバルナビゲーションやトピックパス(パンくずリスト)が消失している場合には「特設サイト」として扱っています。
  • 東京都派生サイト
    東京都が2020年3月初旬に「新型コロナウイルス感染症対策サイト」を開設しました。このサイトのソースコードはMITライセンスで公開され、その後、多くの派生サイトが誕生していることから、今回の調査対象団体が派生サイトを有しているか、合わせて公式・非公式の別を示しています。
    (「このサイトから派生したサイト(github.com)」を元に修正)
  • 感染判明者数
    当日(または前日)の感染者の判明数が「テキストで」確認できる場合に「あり」としています。グラフや画像の一部に示されているものは、(音声ブラウザによる)読み取りが困難であるため「なし」としています。
  • 陽性者の一覧
    当該自治体における、これまでの全陽性者の一覧が表組や説明リスト(定義リスト)を用いて「テキストで」確認できる場合に「あり」としています。表組を画像化したものやPDFによる提示の場合には「なし」としています。
    また、全体の一覧ではなく、発表ごとに資料が分かれているものについても「なし」としています。
  • 首長動画
    新型コロナウイルス感染症への対応に関するメッセージ動画や、記者会見(定時・臨時を問わない)などで、動画による発信の有無を示しています。すべての会見を動画として提供していなくとも、首長による何らかの動画による発信がなされている場合には「あり」としています。
  • 字幕 or 書き起こしテキスト
    上記動画について、字幕や書き起こしテキストを提供しているかを示しています。動画内に字幕を一体的に含んでいるものや、映像に同期するテキストを用いているものは「あり」としていますが、Youtubeで自動生成される字幕を用いている場合には「なし」と判定しています。
    また、書き起こしテキストについては、HTMLページとして提供しているもの、PDFで提供するものなど様々ですが、いずれも「あり」としたうえで「HTML」「PDF」などの別を示してあります。
  • 手話
    上記動画について、手話通訳を提供しているかを示しています。

評価コメント

各団体の調査結果ページには、上記の調査内容・観点とは別に、評価者(視覚障害者および健常者)が実際に、各コンテンツを閲覧する中で気になった点を「評価コメント」として記しています。

アクセシビリティとユーザビリティ、加えて情報自体の有用性との間には、密接な関係があると考えています。本調査は「Webアクセシビリティ調査」の名を冠していますが、コンテンツを利用した立場から幅広くコメントしていること、ご理解いただけると幸いです。

自治体サイトWebアクセシビリティ調査2020を終えて

今年もやってまいりました!自治体サイトWebアクセシビリティ調査2020の発表です。今年はもう迷いなく「新型コロナウイルス感染症」がテーマです。そして、タブレットでの音声による調査を初導入いたしましたよ。

ホームボタン3連打で……

さてさて、PC&タブレットで、全盲調査員の私の負担は2倍になったわけですが、仕方ないですよね、時代です時代。そろそろやらなければならなかったのです。でも、これだけのろのろしていると調査としてはちょうどいい具合だと思いますよ。

ですから怖いですよ、iPhoneだのiPadだの、今これを読んでいる都道府県や政令市のWebマスターの視界に一つは入るでしょうからね。ホームボタン3連打すれば自分とこのホームページすぐに読み上げられますからね。どうですか?音声でわかりますか?あっ、目を閉じるのを忘れないでくださいね。

小学生だって、中高生だって……

えーと、例えば私がイヤホンなどせずに、音声全開でスマホをいじっていたら、そばにいる小学生は「おばさん何やってんの?」って聞いてくると思うのです。というか、聞かれました。もう少し年齢のいった中高生あたりになると、あのおばさんのあれ、どうやるのかな?」などと思って調べたり聞いたりしながら手持ちのスマホしゃべらせてみたりしますよ。私の若いお友達はそうしていました。

住民のみなさんの大切な税金ですからね

ですから、都道府県、政令市のWebマスターにできないことはありません。VoiceOverでもTalkBackでも動かしてみたらいいですよ。そこで、わからないな、おかしいなと思ったら、自分で直す必要などありません、多分、そのような事態は避けなければならないことが仕様書にあるでしょうから、そのまま制作会社さんに「できてないよ」って言うだけのことです。住民のみなさんの大切な税金でつくっているのですから、責任もって大したものに仕上げましょう。

みなさん見事に「指先コロナ」

さて、調査の詳細は調査結果のページに譲るとして、ここではせっかくですから初導入のタブレットでよかったことを書いておこうと思います。現在は新型コロナウイルス感染症対策で、自治体によっては緊急サイト表示になっていますので、まっさらの横並び調査ができないのですが、そのせいもあって、みなさん見事に「指先コロナ」でした。

ほとんどの自治体サイトで、表示されてすぐにタブレットの真ん中に指を当てると「コロナ」って言います。その情報を求めて訪問する人が多いでしょうから、視覚的にも指先的にもとてもよいことだと思いました。視覚的にどうかなんてこれまで私の立場から言えたことありませんでしたから、今、大変新鮮な気持ちです。

字幕がちゃんと聞こえました

さて、次は各地のリーダーのメッセージからです。今年ほど知事のみなさんの顔が売れた年はなかったのではないでしょうか。調査中に、動画への動線やそのコンテンツの情報保障の具合を見てきましたが、青森県の知事の動画を見ていた時に知事の声とテキストの合成音声が交互に流れまして、「なんだ?なんだ?」としばらく戸惑ったのですが、字幕だったのですね。ああそうかあ、こんな感じで字幕って表示されるのだなあとこちらも大変新鮮な体験でした。私が調査中に出会った青森県知事のメッセージに限りますが、聴覚障害者の皆さん、正しく文字起こしされていましたよ。なんてことを、これまで私の立場でどうしたら言えたでしょう。本当に技術ってすごいですね。

心から声援を送ります

いろいろ書いてはきましたが、未曽有の事態にそれぞれの立場で最善を尽くされている全国の自治体、その関係者の皆さんに心から声援を送りたいと思います。なんといっても未曽有ですから、あれ?この場合はどう実装したらよいのだろうというふとした疑問がありましたらお問い合わせください。できる限りのご支援をさせていただければと思います。