ハンカチ王子からハグへ

2021年11月1日 掲載

ハンカチ王子のハンカチっぷりがわからないまま彼の引退の日を迎えました。そしてハグ……。

アクセシビリティとハンカチ王子

ウェブアクセシビリティにハンカチ王子がどうかかわるかは、以前のコラムをお読みください。

フェイスシールドって何ですか?

結局、私はハンカチ王子のハンカチっぷりがわからないまま、彼はプロ野球選手を引退してしまいました。これに似たようなことがまた起こりましたのでご紹介します。

ヤフコメを巡回することに

私はウエブアクセシビリティの専門家ですが、このところはSNSにかかわる仕事も増えています。世間を賑わせている内親王の成婚に関連して、Yahoo!コメントの取り扱いが話題になりました。そこで、Yahoo!コメントを精力的に巡回してみることにしました。

熱い抱擁の記事

ネットニュースのある記事に、入籍した内親王が家族に見送られてお宅を出るシーンが取り上げられていました。嫁ぐ姉に見送る妹が手を広げ、ハグした様子が感動的に綴られていました。読み手の私の胸も熱くなるというものです。

読み手の心の温度

熱い心のままコメント欄に耳を移してみると。
さまざまな角度でつぶやかれるコメントの中に、そのあとすぐに妹が内親王が乗り込んだ車に同乗する映像を見てしらけたというようなものがありました。
本当にそうだとしたら、私の心の温度も変わりそうです。

記事は嘘つきか

では、記事に嘘があるかと言えばそうではないでしょう。お見送りのシーンを文章に起こしたまでです。しかし、コメント欄にどなたかがつぶやいたことが事実ならば、そのシーンの読み手の解釈は変わるかもしれません。私の場合は、まったく逆の感情を抱くことになるのではないかと思います。

当社のスタッフが映像を検証

見えないのでその際の映像を見ることができない私はスタッフにお願いして見てもらうことにしました。当社で確かめられた範囲では、妹は同乗せず、両親と妹に見送られて車は出発したということでした。読み手の心の温度は高いままでよさそうです。

しかし、そのまま別のYahoo!ニュースやトピックス、それに付随するコメントを聞いていると、会見場に妹が同行していたという文章がいくつかありました。当社の検証映像も切り取られたものであったのか、同乗はしないまでもすぐに追いかける映像がどこかで流れたものかなど、軽い疑念は付きまといます。

正しさと情報量

今回はゴシップに近い話題を例にしましたので、事実がどうであっても特段の問題はありません。しかし、読み手に取ってその情報が重要なものであるとき、または強い興味をもつ事柄であるときなど、読み手の特性にかかわらず正しい情報を得ようとするならば、情報量は多いに越したことはないだろうと感じます。

もしも、ハンカチ王子がハンカチ王子だったころにYahoo!コメントが今のように繁栄していたら、私はハンカチ王子のハンカチっぷりをどなたかのコメントから知ることができたかもしれないのです。

正しくない情報や正しくても誹謗中傷に当たるものはあってはならない一方で、正しさを補う無数の情報というものを必要とする場合もあると感じます。
記事の執筆者が後世への記録を意識しながら優れた執筆をすることは相変わらず重要ですが、ユーザーのコメントもそれに匹敵するくらいの価値があることもあるでしょう。

よくない書き込みがあることを承知はしていますが、それらをかいくぐって正しさに近づこうとする読み手がいることもお伝えしておこうと思いました。