2026年9月1日 掲載
お待たせしました!2026年も無事に発表できた自治体サイトWebアクセシビリティ調査、24回目でございます。今年のテーマは「使える?押せる?カルーセル」。見えない私がいつのころからか「なんじゃこりゃ?」と感じていたものの犯人はカルーセルでございました。そういうものの自治体サイトにおけるあれやこれやを調査しています。詳しくは調査の本編をご覧ください。
さて、こちらのコラムでは、全盲の視覚障害者である調査員が調査をしてみて感じたこと、雑感を述べてまいります。今年は自治体公式サイトは誰のためにあるのかに着目し、トップページの構成をもとに対象者を意識した表現を解説していきます。実際の自治体公式サイトから具体的な事例も挙げていきます。自分だったらどのような表現をするだろうかと考えながら読んでみてください。
自治体サイトは誰のためにあるのか
そもそも、自治体サイトは誰のためにあるのでしょうか。いわゆる閲覧者を誰と想定しているかということです。
情報発信をする側は「あらゆる人々」と答えるでしょう。それはそうです。そうできるのならそうあってほしいと思います。けれどもそうなっているでしょうか。
多様な特性や生活スタイルを持ったあらゆる人々を想定した結果、言葉が多すぎて、結局誰にも届いていないなどと言うことはありませんか?入力システムの枠にとらわれて、誰の方を向いて発信すべきかを見失っていませんか?自分の業務をこなすため、上司の合格点を得るための作文になってはいませんか?
自治体サイトは誰のためにあるのか。この情報を届ける先は誰なのか。トップページだけでも対象者をいろいろにとらえることができると思います。その人の方を向くようなイメージで考えてみましょう。
理想のトップページを作ってみよう
正解をサッと示すことができれば簡単なのですが、残念ながら正解はありません。あるとすれば、それは情報発信者が「誠実な意図」を持つことだろうと思います。
そのために、情報発信者には情報の受け手である閲覧者を意識してどう表現しておくのがベストかを考え抜いてほしいのです。そのヒントを提示していきたいと思います。
今回は、トップページを構成するパーツを取り上げ、私の考えを示したうえで調査対象サイトの中から具体的な事例を紹介していく形をとります。取り上げるパーツは以下の6つです。
- メインメニュー
- さがす
- 新着情報
- 注目コンテンツ
- 緊急情報
- SNSアカウント
メインメニュー
まずは「メインメニュー」です。メインメニューはサイト全体の目次です。グローバルナビゲーションなどと言うこともあります。
メインメニューの対象者は誰でしょうか。ここは「あらゆる人々」を想定しておいていいのではないでしょうか。
その代わり、ざっくりとした分類にしておく方がいいと思います。あいまいにということではありません。細かくしすぎないでおくという意味です。目的をもって訪れた閲覧者が、その目的を達成するために進むべき道が一つに絞れるような分類にしておくべきです。
分類されたメニューの配下には、さらに細かい項目が並ぶと思います。ここが隠された状態でも、閲覧者である「あらゆる人々」が「タップやクリックするべき部分はここだ!」と確信をもって進む様子をイメージして分類しましょう。


さがす
次は「さがす」というパーツです。メインメニューが情報発信者側から与えられる受動的な分類であるのに対し、「さがす」パーツは閲覧者側の事由によりやや能動的に閲覧していくことができる部分です。具体的な実例で言うと次のようなものがあります。
- キーワード検索
- 目的別(ライフシーンなど)分類
- よく見られているページ
- よく検索されるキーワード
このパーツの対象者も「あらゆる人々」でいいと思います。入力するキーワードは自由でいいはずですし、ライフシーンにあらゆる人々が混ざっていてもそれほどのノイズにはならない印象です。


ただし、「よく検索されるキーワード」や「よく見られているページ」は、システム上自動で出力されているのか、実際の検索結果がそのまま掲載されているように見受けられます。これらに意味があるかどうか、自治体としての見解を明確にしてから掲載することをおすすめします。
新着情報
次は「新着情報」です。実際の自治体サイトを覗いてみると、実にバリエーションが豊かなパーツです。
文字通り直近の記事が自動で流れていくものから、メインメニューの分類別に並べるもの、組織や手続き別、あるいは閲覧者の行動分類ごとに切り替えられるものまでさまざまです。中には、潔く「本日の日付」で制御するものまで存在します。



ここの対象者は「あらゆる人々」にしない方がいいと考えます。つまり、自動的に直近何件かを表示するという安易な方策に頼るのはよくないということです。なぜなら、そのようにしてしまうと、住民にとって心躍るタイトルが並ばない瞬間が発生する可能性があるからです。
たとえば、入札情報が連続するタイミングで住民がサイトを訪れたらどう感じるでしょうか。自分たちのためのサイトだと感じられるでしょうか。もちろん、入札情報が行政や住民にとって重要ではないと言いたいわけではありません。ただ、もしそれを載せるのであれば、「なぜ今これが住民に必要なのか」という明確な意図をもって表示してほしいのです。

むしろ、新着情報は格好のアピールエリアだと思います。自治体公式サイトのトップページで、自由に書き換えられる場所は意外と少ないからです。閲覧者に「いつ見に来ても同じ」と感じさせてしまうのはあまりにももったいない。「ときどき見に来ると、ここに魅力的な情報が並ぶぞ」と認識してもらえるような、ワクワクする運用を心がけたいものです。
注目コンテンツ
次は「注目コンテンツ」です。ここは、情報発信者が閲覧者に周知させたいことを表現するところです。
ここの対象者のメインは「住民」ですが、時には「来訪者」を想定することもあります。
ここは、発信者側の都合がにじみ出やすいため、「どうにかして相手に届けたい」と担当者が頭を悩ませがちなパーツです。対象者を意識できることは利点ですが、そうやってあれこれ悩んで試行錯誤しているうちに、上司の影がちらつきやすいところでもあるので注意が必要です。
本来は閲覧者のための情報であるはずで、「発信者の都合」が存在することがよくないのですが、それでもどうにかしないといけません。閲覧者にどう魅力的に見せるか。発信者の腕の見せ所です。当社では、「上司の顔色を見るな」という励ましを含めご相談を受け付けています。御用命お待ちしています!



緊急情報
次は、悲しいことに昨今すっかり注目を集めてしまっている「緊急情報」です。
ここの対象者は「当該自治体に住まう被災者」です。時間の経過とともに周辺住民や企業・団体へと広がるとは思いますが、まずは被災した可能性のある住民のための情報発信が第一です。
「正しい内容を、わかりやすく」が鉄則ですが、「正しい内容」は言うまでもないことなので置いておきましょう。問題は「わかりやすさ」のほうです。
多くの自治体サイトで緊急情報への動線は整備され、たどり着きやすくなってきました。しかし、その表現は本当に被災者を思ったものになっているでしょうか。
緊急情報がない平時にこの調査をすることが多いわけですが、「緊急情報がない」ということをわかりやすく表示できている自治体サイトは少ないです。有事に緊急情報をここに表示しますという心持はあるのかもしれませんが、平時に無事を伝えることだって大切な情報です。ここのところの運用を見直してもらいたいと思います。


あとは、情報発信者が正しいと確信して伝えてくださるその大事な情報が、被災者に届くまでの手数が多すぎる傾向への懸念です。被災してしまった、都道府県が、市町村が何か有益な情報を出してくれているのではないかと期待して、必死の思いでやってきた閲覧者(被災者)に、何度もタップやクリックをさせるのですかということです。ここのところの運用も見直しておいてください。
SNSアカウント
ここまで、トップページにあるであろうパーツを取り上げて解説してきました。しかし、実際のところは、検索からたどり着いた末端に近いページから自治体公式サイトに足を踏み入れるケースが圧倒的でしょう。
それでも私がトップページにこだわるのは、踏み入れた足でお散歩していってほしいからです。関連情報を知ったり、ついでに寄り道して新たな情報に触れたりして、住民の生活や人生が豊かになることを望むからにほかなりません。
どんなきっかけであれ、行き着く先が自治体公式サイトであることが多く、「不足情報は公式サイトを見れば載っている」という認識を住民に持っていただくことは大切です。だって、その方がお互い楽ではありませんか?いろいろな形で発信する情報のどこかに多少の不具合があったとしても、公式サイトを覗いてくれれば完璧ですからという共通認識があれば、そう大きく道を踏み外すことはないと思うのです。
もちろん、これは不具合を容認しているわけではなく、やむを得ない側面もあるという話です。現在の情報発信媒体はあまりに多様化しています。多少の不具合のリスクを抱えてでも窓口が多いことは有益であると考えます。
毎日パソコンでウェブサイトを巡回している人ばかりではなく、「Xしか見ない」「InstagramやTikTokしか見ない」という層も確実に存在します。それを思えば、自治体情報への入り口はあらゆるところに用意しておいていいはずです。


自治体側もそれをよく理解しており、さまざまなSNS公式アカウント運用に努めています。その証拠に、近年は公式サイトのトップページにSNSアカウントのリストが表示されることが増えてきました。
ここで、このリストの「見せ方」について一つ提案をしておきます。当該自治体の公式サイト内なのだから、そこに「SNSアカウント」とあれば当該自治体の公式のものだと普通は思いたいところです。しかし、私はアカウント名そのものも併記しておくべきだと考えます。
なぜなら、それぞれのSNSのアカウント名がひと目で公式とわかりやすいものばかりとは限らないからです。「公式っぽくないけれど、うちの公式です」という証明のためにも、現在運用している実際のアカウント名をしっかり明記していただきたいのです。閲覧者がページを遷移させたとき、そのアカウントがパッと開けばそれだけで安心できます。ぜひ、閲覧者に安心材料を与えてあげてください。
それは、そのまま「なりすまし防止」にも役立ちます。丁寧に、手を抜かずにやっているアカウントには、いたずらしにくいものです。
「誠実な意図」の効用
SNSアカウントの項で、丁寧に、手を抜かずにやることが結果的にトラブルやいたずらを防ぐのではないかという見解を書きました。少し意味合いが違うかもしれませんが、みなさんにもがんばっているから許せてしまったという経験はありませんか?
自治体の情報発信をするみなさんにも、どうかがんばってほしいのです。誰のための情報かを考え抜き、対象者を意識した心づくしの発信をしてほしいということです。
もちろん、がんばっていれば不具合があってもいいということではありません。ですが、最初から完璧である必要もないと思っています。「こういう意図をもち、この情報の対象者はこういう人だと想定して、正しく、わかりやすく精一杯表現した」と言いきれるのであれば、誰がその真摯な取り組みを否定できるでしょうか。多少の不具合があったとしても、受け手の気持ちは「ありがとう」に傾くのではないかと思います。
自分のがんばりで少しの猶予を得てください。その猶予の間に、子どもがドリルを解くように情報発信の練習を重ねていけばいいのです。必ず上達します。
発信者と閲覧者の間に、時には担当者と上司の間にも「誠実な意図」が存在すれば、さらにそれが積み重なっていったなら、自治体の公式サイトはいい雰囲気の情報の集合体になると思います。
もし日々の発信につらくなってしまったら、遠慮なく当社にご相談ください。最後になりますが、今年も『自治体サイトWebアクセシビリティ調査』を発表できたことに感謝申しあげます。重ねて、皆様からのご相談・御用命をお待ちしております!