もはや情報弱者ではない

2023年7月3日 掲載

今年も一年の半分が過ぎました。このところはコロナ禍でいつもとは違う雰囲気の期間を過ごしてきましたが、通常モードに戻りつつあります。街に出て、気分も上がっていろいろなことに取り組む中で、見えない自分の情報弱者度が低くなった印象を抱きましたのでお知らせします。

銀座のデパートで

銀座のデパートに出かけました。それは年末のセールのころでしたから、今季のコートが値引きされて大量に並んでいました。それらのコートは魅力的だったけれど、私が見てみたかったのは春のスカートでした。

探しても(同行者に探してもらっても)見つかりません。店員さんがやってきて「何かお探しですか?」と声をかけてくださいました。「これこれこういうスカートがあるはずなのですが……」と伝えると、「ああ、はいはい」というような感じで数分待ってほしいと言われました。なんと、スカートはデパートの倉庫にあって、店員さんがわざわざ取りに行ってくださったのです。

何が起きていたかというと、私はオンラインでそのブランドの新作の下調べができていたのです。しかしリアル店舗ではまだ冬物のセール中で、春物は並べていなかった。この私が、何も見えないこの私の方が、銀座のデパートよりも先取りをしていたなんて驚きです。

その後もいくつかのアパレルショップを訪ねる機会がありました。こちらはもっと大変なことになっていて、そのお店の店員さんが自分の店の商品を理解していないなどというケースがありました。「どちらでご覧になりましたか?」と逆に尋ねられる始末。多少はあきれたけれど、情報弱者のはずの私が店員さんよりも詳しくなれる時代が来たのだなあとご満悦です。

録音図書を読んでいて

視覚障害者の読書と言えば、点字図書や録音図書が主流です。私も録音図書を利用させてもらっていますが、このところその録音図書の再生機が不調でした。私の機械が壊れたのではなくて、その機械と録音図書の発信先とのデータのやりとりが不調になったということでした。これは、何か月かののち再生機側のファームウエアを更新することで解決しました。

不便なことこのうえなかったのですが、たとえばパソコンでデータをダウンロードすればその再生機でも聴けましたし、パソコンやスマホのアプリで再生させることもできました。また、録音図書をあきらめてKindle電子書籍で読書をするという手もありました。

つまり、録音図書の再生方法にも書籍自体にもバリエーションがあったのです。特に、Kindle電子書籍が情報弱者であるはずの私の手中に入る時代が来たことはまことにめでたく思います。

スクリーンリーダーの調子が悪くなって

今年はいろいろなことがあるなあと思って過ごしていたつい最近、今度はパソコンのスクリーンリーダーの調子が悪くなりました。例のごとく、私のスクリーンリーダーが壊れたのではありません。多分ですが、Windowsのバージョンアップにスクリーンリーダーの変更が迫られたのだけど間に合わないというかわからないというか、そういうことが起きていたのではないかと思います。

そのお知らせはメーカーさんから来ていましたので用心していたけれど、なぜか私のパソコンは「大丈夫になりました」と言われてから不調になりまして、とても心配しました。当社の社内では、「待っていればそのうちまたアップデートの情報が来るよ~」という具合にのんきなもので、これはスクリーンリーダーの不調を理由に仕事をさぼってもいいのだなと理解して私ものんびり過ごすことにしました。

数日が経過して……。本当にメーカーさんからアップデートのお知らせが届きました。現在はいつも通り快調におしゃべりをしてくれています。やれやれですがそんなに長くもさぼれなくて、それはそれでがっかり。

という話ではなくて、このスクリーンリーダーが不調なくらいでは仕事がさぼれない事実に気づいてしまったのです。だって、スマホもタブレットも、そしてがんばれば隣のパソコンの別のスクリーンリーダーも無事におしゃべりしちゃうんですもの。情報弱者だったはずの私は、いつのまにかこんなにたくさんのおしゃべりグッズに囲まれていたのでした。

誰にどう感謝したらいいものか

この状況を感謝したいけれど、だれにどう感謝したらいいものかはよくわかりません。

いろいろなものがよくしゃべる、そのおかげでいろいろなことがよくわかる。時には見える人以上に、それをよく知る人以上に知っているなんてことがあるのです。

誰かはわからないけれど、そうしてくれたすべてのみなさんにありがとう。