スマホはホケン

2022年7月1日 掲載

前回のコラムの最後にちらっと書きました。
自分の目的は自分が一番よく知っています。
ですから、数あるデバイスやアプリや、私たち視覚障害者の場合は音声化の方法の中から、自分に適切なものを自由に選んだらいいですよということを。

著名人の情報機器事情

そんなことを再び書こうと考えたのは、『徹子の部屋』に島崎和歌子さんが出演して、ガラケーを使用しているというお話をされているのを聞いたからです。その翌日に見かけたネット上のエンタメ記事にも、反町隆史さんがガラケー使用者だということが書かれていました。

島崎さんと反町さんっておいくつかしらと気になり確かめたところ、島崎さんは49歳、反町さんは48歳ということでした。一方、『月刊文藝春秋』の巻頭随筆を執筆している藤原正彦さんは齢78。

2022年7月号の「器械嫌い」と題する随筆に、

初めてスマホを購入し(中略)4ヵ月ほどたつ

藤原正彦 器械嫌い 古風堂々38|文藝春秋digital
https://bungeishunju.com/n/n81217833b442

とありました。

年齢も性別も身体特性もどうであろうといいわけで、年齢でイメージをくくるなど当社が一番嫌うところではありますが、40代のガラケー使用を意外に感じたり、70代のスマホデビューを応援したくなったりと、大変興味深く受け止めました。

私と業界の情報機器事情

この際だから、私も自分が使用している情報機器を点検して回りました。正直なところ、スマホは要らないという結論です。島崎さんや反町さんがうらやましい、私もガラケーに戻したいです。芸能人でも学者でも作家でもなく、一応IT系の人間と言っていいと思いますが、そんな私でもスマホは要らないのです。

実際、同じような業種の方でガラケー使用者もいるようです。
ガラケー & PCでOKなのでしょう。

私も、今となっては自信をもってガラケーでいいと言えますが、それはスマホやタブレットにとりあえず触れてみたからです。それらに触れずに業務を続けているということは、それらの情報機器に触れなくてもそれらが含む機能がわかるということですから賢い。何も使っていないのに腕にスマートウォッチを装着してしまう私とは大違いです。

アクセシビリティはこんなにシンプル

つまり、アクセシビリティとはそれくらいシンプルだと言えます。情報機器がどうあろうと、人々がそれらをどう使おうと、やることは同じ。「誰にとっても、何をはさんでも、同等な情報をそこに置いておきましょうよ」このような取り組みをすることなのです。

見えない人にも聞こえますか
聞こえない人にも見えますか
見えなくて聞こえない人にもさわれますか
身体が動かせない人も選べますか
子どもにもお年寄りにもわかりますか
言語がわからない人にも伝わりますか
スマホじゃなくても読めますか
PCじゃなくても書けますか
Wi-Fiないけど見れますか

このようなあらゆる状況を承知し、その最大公約数を見つけ出す。
そういう楽しい仕事をしています。

スマホはつまり私の保険なんだなあ

そのアクセシビリティの実証のためにスマホを持っていて、実証しているわけだけど、私がもっと賢ければスマホなしでも実証できるのだと思います。だけどそこまで賢くないからスマホが必要で、それは生活者としての私とは少し乖離しているので心苦しく後ろめたいけれど、それも現在の私の情報機器事情なのです。

そんな今を記念して、ガラケーへの思いを記しておくことにしました。
ちなみに、そんな今とは46歳の夏です。