自治体サイトWebアクセシビリティ調査2021を終えて

2021年9月1日 掲載

お互い、おつかれさまですと声をかけ合いたくなる9月1日、ユニバーサルワークスによる自治体サイトWebアクセシビリティ調査の19回目の発表の日を迎えました。全国の都道府県、政令指定都市、そして調査対象ではありませんが日々の自治体公式ホームページの運営に携わるすべてのみなさんに、お礼とねぎらいの言葉を贈りたいと思います。

改めてお礼を

2003年の創業から毎年おこなっているこの調査は、公共のウェブサイトにアクセスできるか否か、アクセスしやすいかどうかということを知るために、同時期に横並びにおこなうところに特徴があります。

これまでにも何度も申し上げてきましたが、アクセスはできます。
アクセスしやすさにおいても、高いレベルのつくりになっています。
調査員としてではなく、一人の視覚障害者として感謝申し上げます。

らしさとメッセージ性

このことからもわかるように、当社が当初この調査に課していた目的は既に果たされています。もしも次の段階に進むとしたら、これも常々申し上げていますように、その自治体らしさ、メッセージ性をどう扱うかということになると思います。コラムでは、アクセシビリティの観点を超えて、この点について考えてみたいと思います。

その自治体らしさ、メッセージ性とは何かと言われたら、お国自慢ですよとお答えしたいと思います。ときどき、なにを自慢したものかとおっしゃる自治体があります。また、ときどき、いくつもいくつも自慢があるよという自治体もあります。

自然とお国自慢が

今年の調査をしていて感じたことは、お国自慢が自然と洗い出されているのではないかということです。お国自慢とは、観光名所というだけではありません。新型コロナウイルスのワクチン接種予約システムだってそうですし、土砂災害の検証や支援などもそうなのです。

そうなりますと、有事に近い今は、皮肉なことにこれだというものが自然と現れています。こういう状況だけれども、だからこそこれだということもわかってきます。都道府県、政令指定都市を横並びに見ていますと、これらはまるで旅路を行く列車のようなのです。

3つの旅路を行く自治体サイト

公式ホームページにある情報やお国自慢を駅にたとえましょう。
すると、各駅停車で行く自治体、快速特急で行く自治体、列車ではなくて航空機にする自治体などさまざまです。

ざっくりとではありますが、この3つの旅路にパタンを分けてホームページをつくってみます。

各駅停車のホームページ

新型コロナウイルス感染症の状況がどうなっても、災害が起きたとしても、あくまでも各駅停車を貫く自治体です。お客さんが乗っても乗らなくても、毎日同じ時刻に各駅に停車してくれます。有事には無人駅を有人にして対応します。

快速特急のホームページ

駅はいつもありますが、おもにターミナル駅に停車する自治体です。ターミナル駅は、感染症になったり災害になったり観光になったり全国レベルのイベントになったりします。駅の拡大縮小工事も盛んです。

航空機を飛ばすホームページ

有事には空港だけにする自治体です。地震や豪雨災害の空港になることが多いです。駅は一応ありますが、列車の遅延や運休が増えます。

みんなが得意な各駅停車

アクセシビリティと駅舎の建設は必ずしもイコールではありませんが、アクセシビリティが整うと比較的駅舎もしっかりしてくるという印象があります。ですから、多くの自治体が各駅停車は得意であろうと思います。しかし、ダイヤの乱れなく安全に乗降させることは難しいものです。

あこがれの快速特急

快速特急を走らせることは、多くの自治体のあこがれです。私がウェブマスターだったらここを目指します。今日本は有事に近い状況ですので、そこをターミナル駅にしてホームページの構築を試みるのも手ですし、平時のうちにポジティブなお国自慢をもとに拡大工事しておくのもよいでしょう。

たとえばお国自慢を観光とした場合、ウェブマスターは観光にかかわる部署といっしょに構築を試みると思います。そして、有事は平時に突然やってきますので、私だったらその平時の構築部隊を有事にスライドできるようにしておきたいです。つまり、災害情報の発信を、災害部署とは関係のない観光部隊が担うというしくみも合わせて構築しておけると、運用はさぞかし速やかであろうと妄想します。

有事のときこそ学びましょう

航空機を飛ばすのは、そうしなければならないときです。インフラの関係でそうしなければならないときはありますので、ターミナル駅一つで形になるように、またその意図が伝わるように準備しておきたいところです。

ウェブマスターは、他人の有事のときほどインプットが必要です。インターネットは世界に開かれているので、有事のときに当事者がどうしているかを知ることができます。
学びましょう。そして、平時になったら有事の経験者と情報交換ができるとなおよいでしょう。そんな機会がありましたら、ぜひ私も呼んでください。

さあ、みなさんはどの旅路を行きますか?また、行かせたいですか?