ある日曜日の朝に
のんびりとした日曜日の朝に、ドキッとする記事が耳に飛び込みました。全国紙の1面に、当社の所在地のお隣の町がネガティブに取り上げられています。なんでも「全国的にみて特に事故が多い交差点の一つ」、いわゆる「魔の交差点」があるというのです。これがそのこと以上によくないことは、人身事故のデータはある、近隣に住む人々も自己の多い交差点であることを認識している、なのに県警の反応が以下のようだったということです。
「(交差点の南の)バイパスの事故の件ですよね」
(みえない交差点)危ない交差点、統計に死角 事故68万件を分析、多発地点浮かぶ:朝日新聞デジタル
「いや、もっと北の市道の交差点なんですが」
「広い道路でもないし、本当にこの場所ですか? 一応調べてみますが……」
渋々、という雰囲気で電話は切れた。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15268623.html
地元の名誉のために先に書き添えると、その後、この交差点は停止線が2本引かれ、「止まれ」の標識を立てるなどの対策がされ、事故も減っているようです。
交通とウェブ閲覧の親和性
では、どうしてこのようなことになっているのかという続きがこうです。
「ほとんどが軽傷事故。警察としては死亡や重傷事故が頻発している場所を分析するのが主流」とする。
(みえない交差点)名前や信号機ないと、集計対象外 警察のシステム上、「調べられない」:朝日新聞デジタル
(中略)
静岡県警によると、事故が多い交差点を探す場合、登録されている「交差点名」で検索し、集計するのだという。「逆に言うと、名前が付いていない小さな交差点はそもそも検索の対象にならず、集計から漏れてしまう」(交通企画課)というのだ。沼津市の交差点にも、名前はなかった。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15268586.html
記憶に残らず、データはあっても統計には上がらずというところのようです。私がひときわ悲しく感じたのは、ウェブアクセシビリティといっしょだなと思ったからです。「アクセス」が同意であることから、交通とウェブ閲覧は親和性が高く感じられます。停止線や標識の不備が、代替テキストの有無や単語内のスペース、不適切なリンクラベルや文書構造に見えてきました。
翌日、月曜日の朝に
げんなりと過ごした日曜日でしたが翌日には元気になりました。なぜなら続報が届いたからです。
「交通事故分析システム」を導入した愛知県では、交通事故死者数が減ってきたのだそうです。けれども、こちらも名もなき交差点での事故データを引っ掛けるのは難しいのだそうです。
ところがです。
滋賀県警が、手作業、力技で、規模の大小や名前の有無にかかわらず事故のデータをシステム登録しているというではありませんか。
この記事を読んで本当にうれしかった。そうだよ、検索で引っ掛からないのなら人力で入力すればいいではありませんか。これこそが安全という目的に適った行動だと思いました。
ウェブサイトも力技で
私たちのウェブサイトの診断においても同様のことが語られます。チェッカーのようなツールで、なんとかよくないところを洗い出せないかと。
だけどできないのですよ。まさに名もなき交差点を見落とすことになるでしょう。そして事故が多発します。命にかかわらないだけいいとしましょう。
ですから当社では、滋賀県警のように手作業、力技で何百何千というウェブサイトやページを見ています。滋賀県警は3,000くらいということですので、負けずに頑張りたいと思います。
負けずにがんばると言っても、なにかうまいツールはないかなあと考えることはあります。聞かれることも多いです。だけどやっぱりないのです。見える人が見て、見えない人が聞いてを地道にやるほかありません。
迂回を楽しむ
まずい箇所の洗い出しではなく、まずい箇所のかわしかたも一つ。リアルの交通でこの方法を提案するのはいささか殺生でしょうか。ですが、ウェブ上ではおすすめしたいことがあります。それは、その道を使わないということです。どうしても使いにくい、使えないというところはあります。特に視覚障害者がウェブ上を歩く時はそうです。そんなとき、そこは使わないという選択肢をもつと楽です。
情報はあふれていますので、「こうすると歩けるよ」と教えてくださる方がいます。確かに歩けるけれど、歩いてみてもしょうもないことや、そこは歩けるけれどその先は行き止まりというようなことがあります。こうした情報に振り回されたくないものです。
そして、その道にあまりこだわらず、迂回を楽しむのはどうかなと考えています。デバイスもアプリも音声化の方法も複数あります。その組み合わせは個人的でいいと思いますし、その使い方や、日本語としてどうかとは思いますが“使え方”も人それぞれでいいような気がします。
自分が一番自分の目的を知っているのです。
いろいろな道を探索してみませんか。