サイト内検索されないサイトを

視覚障害者の界隈にはびこっているかもしれない検索神話をなんとかしたい!今年は魅力あるコンテンツ、なかったことにされないコンテンツ作りをこころがけます。

ずっと昔のテスター体験で

まだ、創業間もないころ、あるWebサイトの調査を依頼されました。私と同じように音声ブラウザでWebサイトの閲覧をしている人々が集められてその調査は行われました。テスターは10人くらいだったと思います。

同じ環境で一斉にタスクが与えられました。私たちテスターがそのタスクをどのように解決するか、閲覧するかということを数人の調査員が見ているようでした。

サイトのトップページが表示されていました。「どんな方法でもいいので、あなたのいつものやり方で○○についてわかったことを教えてください。」というようなお題が出されました。しばらくすると、閲覧の様子を見ていた調査員が笑い出すのです。なんと、私以外の全員がサイト内検索をしたのでした。

テスターがサイト内検索をした理由

調査員が「どうしてみんなサイト内検索をしたのですか?」「いつもそうしているの?」と質問すると、私以外のテスターは何がおかしいの?という反応です。「だってそう習ったから」というのが彼らの答えでした。

今もそれに似た状況が

検索好きは健在のようですよ。視覚障害者に限ったことではないかもしれませんが。

あとは圧倒的に読んでいません。見えないのだから読むほかないように思いますがそうではないようです。

初心に戻ってユニバーサルデザインとは

インターネットが成熟してきて、SNS全盛の今、コンテンツは華やかになりました。機能が増えるのは当たり前、さらにそこは格好の商業の場でもあります。華やかな機能を耳で理解し処理するのはなかなか大変です。意図しない表示がされることもありましょう。

ですがそうだとしても、ルールに基づいて構築し素直な情報設計をすれば、美しい実装は可能です。機能のわかりにくさや広告などの存在は、邪魔なものではなくて立派な情報だとあえて言おうと思います。

訪問者にとって不要不急の情報だとしても、その情報が誰にとっても同じようにわかり、その習得への負荷もできるだけ差異が生じないようにしようということがユニバーサルワークスの取り組みです。それが障害者差別解消法やJIS X 8341-3が目指すところでもありましょう。

視覚障害者の態度も大切です!

法令や規格に基づいて取り組みが進む中、視覚障害者が聴きもしない使いもしないとなれば、誰が配慮を申し出てくれるものかと私は苦慮します。

令和3年1月号の文藝春秋に予備校の地理講師の話がありました。文藝春秋デジタルでよく読まれたのだそうです。

『「いま役に立つ」情報よりも「いま役に立たない」教養を』と題されたその記事によると、「入試に出る」という言葉に受講生は敏感だが「入試には出ないかもしれないけれどおもしろいよね」という話には反応が鈍いというか、迷惑そうな顔をするというものでした。それはそうだろうなと思いつつも私は聞き逃せませんでした。

このコラムで述べてきた視覚障害者の態度は、受講生のそれと近いと思います。目的のほかから得る情報もわりと重要なことがあります。わかりにくいなりに全体の様子を知ろうとか、どうしたら乗り越えられるだろうとか工夫してみることで、ちゃんとわかることもたくさんあるように感じます。もう少し読めば書いてあるのにということがあるんですよ。

サイト内検索をされないサイトをつくろう

Webサイト、SNSやショッピングサイト、アプリなど、さまざまなサービスやツールの制作や発信をする側にいるみなさんは、コンテンツをないものにされないようにしましょう。今年もそんな発信側のみなさんのお役に立てるよう、現状を踏まえてお手伝いさせていただきたいと思っています。

そして個人的には、こちら側の、閲覧者側の視覚障害者がもう少し忍耐力を持てるような啓発ができたらなあと強く思う年明けであります。