たった一人でレジに並んだ日

2025年5月7日 掲載

買い物かごに商品を入れてひとりふたりと短くなっていくレジの列に、見えなくなってから一人で並ぶことはできなくなっていました。それがオンラインでできたのです。25年ぶりにレジ待ち感覚を味わいました。

言わずと知れた(?)無印良品週間

無印良品には、無印良品メンバーなら全品10%オフで購入できる「無印良品週間」というセールがあります。

全品10%オフになるのは魅力的なので私も参戦したいと思っていましたが、リアル店舗に出向くためには人の手を借りねばならず、大混雑のオンラインショップを音声で切り抜ける自信もなく、いつも無印良品週間よりも前に定価で購入することを繰り返していました。これはこれでよかったのです。サイズや色が欠けることなく、売り切れもほとんどない状況で買い物ができますから。

2025年春の「無印良品週間」に参戦しました

ところが、今年(2025年)の春は、購入したいものがあったのに「無印良品週間」よりも前に注文することを怠っており、気づくと翌日から「無印良品週間」が始まるという日になってしまいました。明日なら10%オフなのに今日注文するのはなんとなくためらわれて、ならば明日参戦してみようという気になりました。

3月21日(金)の朝8時になりました。出勤前に注文を済ませようと思い、購入したい商品をカートに入れて注文画面に進みました。

1回目に並んだネットストアのレジ

3月21日(金)の朝8時に注文画面に進むと、「仮想待合室」に案内されました。そこには謎の一桁の数字と、お客様の前に並んでいる人数が68,000人と表示されました。

68,000人って嘘だろう。ひょっとしたら謎の一桁の数字の方が待ち人数なのではないか。読み上げの不具合でおかしく聞こえることもなくはないという希望的観測を抱きながらしばらく待ってみました。すると、謎の一桁の数字は二桁になり徐々に増えていきます。一方、68,000の数字は少しずつ減っていきます。まさかのまさか、私の前には本当に68,000人が並んでいたようです。

これがリアル店舗だと嫌になってしまうでしょうが、ネットストアです、オンラインなのです。しかも25年ぶりの単独レジ待ちとなっては俄然やる気が出てきました。待ってやろうじゃないのと。

勤務中に買い物していていいのだろうかと少し気にはなりましたが、これはアクセシビリティ調査だと言いわけをして続行。ところがそう簡単に列は進みませんでした。なにしろ68,000人です。この日私は11時ごろに出張しなければならず、4万人目くらいで断念。でも、おもしろそうなので順番を待ったまま外出することにしました。

2回目に並んだネットストアのレジ

帰宅をしてPCのブラウザを覗くと、案の定とっくに順番は来ていました。購入手続きの制限時間である10分も過ぎていて、私の順番待ちの権利は失効していました。

もう一度並びますかというような案内が聞こえてきたのでそのリンクボタンを押してみました。すると、再び列に並べたようです。

このとき21日(金)の20時で、またまた68,000人待ちでした。昼間よりはレジの進行が早いような気はしましたがまだまだです。入浴やら家事やらをしながらときどきブラウザを覗いて並び続けました。

23時ごろになっていよいよ手続きが可能になりました。この直前が面白かったです。待ち時間が1時間を切ると分刻みのカウントダウンが始まり、待ち人数もみるみる減っていくのです。私はちょっとした興奮状態になりました。

ところが買えなかったのです。いつものようにゆっくりと買い物かごの商品を確かめて注文の決定ボタンを押した時点で10分近くかかっていたのでしょう。無印良品のネットストアでは、カード支払いにワンタイムパスワードが必要です。そのことをすっかり忘れていた私。スマホもスマートウォッチも別の部屋に引き上げていて、それらを取りに行きおろおろしながらワンタイムパスワードを確かめて入力することの難しさよ。時間切れのようでした。

3回目に並んだネットストアのレジ

悔しくなってもう一度列に並びました。またまた68,000人。だけどさすがに集中は切れ、眠くなってもきたのでタイマーをかけて一旦就寝です。そして……、タイマーは鳴りましたが起きられず朝まで熟睡。翌日22日(土)の5時になってそうだそうだとブラウザを覗きました。

予想どおりとっくに私の順番は来ていました。しかし、昨夜とは違いレジ待ちの人がいないようで、10分間の購入手続きの制限時間は適用されていないようでした。いつもどおり購入商品とサイズや色をじっくりと確かめて、ワンタイムパスワードも落ち着いて入力して無事に注文が済んだとさ。

自分が見えないことをすっかり忘れていました

注文手続きを済ませてからふと気づいたことは、普通に買えたなということです。少し興奮していたようで、アクセシビリティ調査の感覚をすっかり忘れていました。だからスクリーンショットを撮るのも忘れていたわけだけど、普通に並んだよということを強調したい。これってすごいことです。

「仮想待合室」の様子は音声でもわかりました。特にリロードはしなかったなあ。カーソルを上下に動かすと謎の数字が増え、待ち人数が減り、待ち時間が1時間を切ると分刻みのカウントダウンになりました。その数字が示す現在時刻もちゃんと変更されて聞こえていました。謎の数字は「100」になると自分の順番になったから百分率が数字で聞こえていたんですね。これは自分の順番が来てそういうことだったのだと最後に気づきました。

いろいろと私個人の事情でトラブルはあったのだけれど、無印良品のネットストアにアクセシビリティ上の決定的な不具合は感じられませんでした。見える人と同様に見えない私もレジ待ちをして買い物ができたという事実。25年ぶりのレジ待ちは68,000人という大行列、しかも21時間にわたり3回も並ぶことになったわけだけどとても楽しかった。誰の世話にもならず、見えなくてもたった一人でレジに並べた記念すべき一日の報告でした。