第37回 JISやさしい寸評(6) 動画と音声 (2006年4月3日掲載)
かなり狭い範囲を業務としている弊社なので、JISX8341-3準拠とか、アクセシビリティ改善とかの仕事がほとんどである。「みなさん、なかなかよい心がけです。」とにっこりしながら業務に携わっているが、「あの〜、(サイトリニューアルにあたり)いろいろなホームページを見てみたんですけど、○○市(社)さんや○○市(社)さんなんかはがんばっているようで、あんなふうにしてみたいのですが・・・。」と参考サイトを提示くださるお客様は多い。客の意にできるだけ沿うのは私たち制作側の大切な心がけであるので、「どれどれ」と訪れてみると例のアイツがいるのだ。アイツとは、全面FLASHとかスプラッシュムービーとかいうもの。正直なところ、がっかりする。単なるリニューアルではないのだ。明確にアクセシビリティを意識したリニューアルの依頼であるのにどうしたことだと思う。
全面FLASHは本当に困る。芸能人の公式サイトや化粧品メーカーのサイトで出会ったことがある。トップページを乗り越えれば何とかなるのではないかと考え、さまざまなキーワードで検索をかけて、次階層がヒットしないだろうかと願ったり、サイトマップのアドレスを推測してみたり、涙ぐましい努力をしてみることもあったが成果はほとんどみられなかった。非常に切ない。
スプラッシュムービーに併用されていることが多いが、急に音楽が流れるのもびっくりする。都道府県のサイトにはみられないが、自治体サイトでも何の配慮もなくこのような形をとっているまちがある。音に慌てている間に、5秒とか10秒とかが経過して、別のページに遷移してくださると、私などはすっかり舞い上がってしまい、動悸を抑えるのに苦慮する。それでも閲覧の必要があるときは、遷移先のページをブックマークさせていただくが、そのようなときの悔しいことよ。
音声ブラウザで生きているので、ついついFLASH等の動画を敵のように表現してしまうが、そういうことではない。私は体験できないのだが、聞くところによるとFLASHとやらはすばらしいツールであるし、ムービーもその刺激的な感じが理解できなくはない。つまり、そうしたツールを使用することに必然性があれば、誠に結構なことだと思っている。何の必然性もなく、うかがわなければならないサイトで門前払いをするような使用をしているから怒るのだ。
「動画で見せたい」、「ここで聴かせたい」……、その気持ちはよ〜くわかる。「みせとくれ」、「聴かせとくれ」……、あなたがそう思うとき、私もそう思うかをよ〜く考えて、思いが一致するようであればどうぞ公開しておくれ。それは、誰かが見えないからとか聞こえないからとかいうことではなくて、純粋に多くの人はどうかという観点でいいと思うよ。そのときにね、ひとつ注意をしておくれ。見えない人には見せる部分であることを、聞こえない人には聞かせる部分であることを、事前に教えてほしいということを。あきらめさせることも肝心。こちらとしても、あきらめられずに費やすだろう時間をイメージすることに当てる方が効率的ですので。感覚器が欠けていても、イマジネーションは持ち合わせていますので。
5. 開発及び制作に関する個別要件
5.3 操作及び入力
e) 利用者の意思に反して、又は利用者が認識若しくは予期することが困難な形で、ページの全部若しくは一部を自動的に更新したり、のページに移動したり、又は新しいページを開いたりしてはならない。5.4 非テキスト情報
e) アクセス可能ではないオブジェクト、プログラムなどには、利用者がその内容を的確に理解し操作できるように テキストなどの代替情報を提供しなければならない。 また、アクセス可能なオブジェクト又はプログラムに対しても、内容を説明するテキストなどを提供することが望ましい。5.7 音
a) 自動的に音を再生しないことが望ましい。 自動的に再生する場合には、再生していることを明示しなければならない。5.9 言語
f) ウェブコンテンツは、文章だけではなく、分かりやすい図記号、イラストレーション、音声などを合わせて用いることが望ましい。