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アクセシビリティコラム

番外編:レベルA、そのアクセシブルでない満たし方

この記事は、Web Accessibility Advent Calendar 2016 8日目(2016年12月8日)の記事です。

規格を満たすということ

JIS X 8341-3:2016という規格があります。「高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェアおよびサービス―第3部:ウェブコンテンツ」と呼ばれることもありますが、界隈では「ジス」と省略されることも多いようです。なので「ジスタイオウ」というと、程度の差こそあれ、JIS X 8341-3:2016を満たすべくWebコンテンツを企画・制作・運用することを指していると考えて差し支えありません。

JIS X 8341-3:2016は、「JIS」(Japanese Industrial Standards)ですので、日本国内で用いられる規格です。が、実際は、2012年に発行された ISO/IEC 40500 と完全一致した規格となっていますので、国際基準で作成されたWebコンテンツを、日本国内あるいは日本語のWebコンテンツとして公開する際に、特別な配慮が必要になることはありません。要するに「ジス」を満たしておくと、その品質のままで、Webコンテンツが確保すべきアクセシビリティの基準を世界的にも満たすことになります。

この文章はレベルAを満たすつもり

JIS X 8341-3(以下「JIS」)という規格の話が終わったところで、本題に入りたいと思います。JISは、Webコンテンツが確保すべきアクセシビリティの基準を示したもので、検証可能な複数の達成基準によって構成されます。達成基準には、さまざまなユーザーや利用状況からくるニーズを満たすために、3つの適合レベルが定義されていて、「最低レベル」と称される適合レベル「A」(シングルエーと読みます)では、特定の環境に対する配慮が不十分なケースがあるかもしれません。ですが、Webアクセシビリティに取り組むからには、レベルAぐらいは少なくとも確保しておこうよ。というものなので、この文章自体もそうありたいですし、そうすべきだと考えています。

このあたりまで来ると、「あ、文字が読みにくいな」と思う方も増えてくるでしょうか。レベルAを満たす文章にすべきと書いておきながら、良くないことですね。

この文字の読みにくさは、達成基準1.4.3で規定される「コントラスト」が十分でないことに起因しています。基準では、色の計算式に当てはめたときに、前景色(文字色)と背景色とが、少なくとも4.5:1のコントラスト比を確保すべきとされています。それに対し、この部分のコントラスト比は、3.19:1しかないので、基準を下回っていることになります。ただし、コントラストに関する達成基準は、レベルAAに該当するため、どんなにコントラストが低くても、レベルAを満たす可能性があるのです。

私は、この話を「私が意図する視覚表現で閲覧をしている」ことを前提に書いています。なので、実は、音声でアクセスしているユーザーや、私が意図する視覚表現とは異なるスタイルで閲覧しているユーザーには、この「低コントラスト攻撃」は全く通用していないかもしれません。音声ブラウザ利用者には、割と8341(JISの規格番号は「やさしい」の語呂合わせだそうですよ)コンテンツになっているかもしれず、「へぇ、見えている人には読みづらいんだー。意地悪だな、この人。」とでも思ってくれているのかもしれません。また、いわゆる「マシンリーダビリティ」を損なわないコンテンツになっているはずです。

とは言え、わざわざ、多くの人に読みづらいWebコンテンツにする必要はないと思いますので、コントラストを通常に戻しましょう。

これでも、レベルAを満たしているはず

コントラストは戻りましたが、今度は、また別の問題が生じていますよね。Webアクセシビリティをかじったことのある方なら、「単語の途中にスペースを入れるべからず」というのは、知っていることと思います。

「場所」を「場 所」と書くと、「ば ところ」などと読み上げてしまうから、やめましょう。

というものですね。

単語の途中にスペースを入れることは「1.3.1 情報及び関係性の達成基準(2016年12月8日 午前9時30分 訂正)1.3.2 意味のある順序の達成基準」を満たさないことになりますので、レベルAを満たすことができません。繰り返しますが、この文章はレベルAを満たすつもりで書いています。ですので、HTML上で単語の途中にスペースを入れることはせず、CSSで文字と文字の間隔を広く設定しました。これなら、Aを満たす可能性が残されます。(これだけ読みにくいと別の基準にひっかかりそうですが…。)

実感いただけましたか?

いろいろ書いてきましたが、これまで書いてきた文章、この中身はそれほど重要ではありません。たとえ、コントラストが超低かったとしても、CSSで読みにくい文章に設えたとしても、「レベルA準拠!」と宣えてしまう可能性がある。読んだ方が、そのことを実感できるようなコンテンツであったなら意味があったかなと思っています。

JISや、ISO/IEC 40500(=WCAG 2.0)は正式な規格ですので、Webアクセシビリティに配慮するときの教科書と言えると思います。また、総務省が示す「みんなの公共サイト運用ガイドライン」や、ウェブアクセシビリティ基盤委員会が示す各種資料も、Webアクセシビリティに取り組む上で、極めて有用な資料です。でも、適合やら準拠やらを錦の御旗に掲げて、達成基準を満たすことだけに心血を注いだり、現実的ではない「べき論」に走ったりするのは、もったいないことだと感じます。利用者、利用機器、利用環境、利用状況は、多種多様です。「みんなが使えるWebサイトへ」向けて、ともに進んでいけたらいいですね。

引き続き、Web Accessibility Advent Calendar 2016をお楽しみください。

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