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アクセシビリティコラム

第88回 小説にみるスクリーンリーダー

小説新潮』を毎月読んでいる。もっとも、音訳されて手元に届くのは書店に並んでから1か月以上を要する上、私が返却日を守れないことが多いので、相当なタイムラグが発生している。なので、もう連載は終わっているかもしれないが、私の中では連載中の平山譲著『サッカーボールの音が聞こえる』を紹介したい。

私のコラムを読んでくださるみなさんであれば、この小説のタイトルを見て、すぐに、ああ、ブラインドサッカーのお話かなと想像できるかもしれない。読んでしまったあとで読む前の様子を思い返すのは難しいが、私はあまり文芸誌の小説のタイトルは気にしていないようだ。毎月、『小説新潮』に掲載されている小説の半分以上を読んでいるが、タイトルを言えるのは一つ二つだ。単行本はタイトルを選書のよりどころにしているが、文芸誌はそこに載っているから読んでいる だけなのでこのようなことになっているのだと思う。したがって、『サッカーボールの音が聞こえる』というタイトルはほとんどすっ飛ばして読んでいた。ストーリーを追うことで、主人公が目の病気を抱えていることがわかり、やっと、ああ、ブラインドサッカーにつながるのだなと気づいた。また、それが一般文芸 誌であり、そのことはわかって読んでいるのだけれど、音訳図書という形になっているだけで、なんとなく内容まで見えない人向きのような気がしていて、主人公が視覚障害者になっていく様子を呼んでいても何の違和感もなかった。

だけど、よく考えてみたら、『小説新潮』は一般の文芸誌だ。障害者のお話など特に目新しくはないけれど、主人公が、この小説の肝と思われるブラインドサッカーを知る媒体としてインターネット(スクリーンリーダー)が登場したのは新しいなと思った。私は読書好きであるが、方向性が偏っているので正しい分析とはいかないが、小説中にスクリーンリーダーが登場するなどというのはごくわずかではないかと思う。

著者の平山譲さんについて調べてみたところ、著述業の方で、テーマにスポーツが多いように感じはしたが、特に障害者どうこうというこだわりがあるわけではなさそうだ。著作は多く、知っていてもよさそうだが、失礼ながら本作以外は読んだことはなかった。私の中では連載中の本作は、来月発売予定とのこと。

Webアクセシビリティの啓発活動というのが、私に課せられている重要な仕事であるわけだが、小説に登場させてみるなどということに思いがいたらず、この作品を読んでうれしかったけれど悔しかった。スクリーンリーダーの存在を、知るべき人が知ることは大切だが、別に知る必要のない一般の人々にもこういうものがあるんだあと知ってもらうことは、今後重要になっていくだろうと思う。私も何かおもしろい宣伝方法を考えてみようっと。

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