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アクセシビリティコラム

第86回 医薬品の通信販売

私のお財布からはほとんどお金が減らない。減らないので投入の必要もなく、年中わずかなバス運賃の増減しかない。とはいえ、生きてはいるので、生活必需品は購入しているはずで、改めて自分の購入生活を振り返ってみると、ほとんど店買いをしていないことに気づく。

店で購入するものといったら、食品とどうしてもこの手で確かめて買いたい衣類だけだ。こんなことで済むのだろうかと何度も思い返してみるのだが、 本当に済んでしまうのだ。どのジャンルにおいても新商品が気にはなるが、いろいろ試してみるチャレンジャーという性格でもないので、たとえば、シャン プー、石鹸、歯ブラシ、歯磨き粉などの衛生用品、化粧水などのスキンケア用品、各種化粧品、ここのところは下着類まで同じものを繰り返し購入している。以前から色違いを揃えるというのが好きな傾向にあったので、カットソー、ジーパン、パンツくらいは、気に入れば複数のカラーを購入し着まわすというファッションセンスゼロの暮らしもわりとご機嫌にできる。もう、こうなってくると店に出かけていくというのが無駄な行動でしかなく、オンラインショッピングで宅配便を待つのが合理的というものだ。

ところがである。いや、ところがという前に気づいていたし、その日が来るのがただ怖かっただけなのだが、愛用の常備薬が切れた。みなさんご存知の 通り、医薬品の通信販売が薬事法の改正でできなくなった。もうしばらくは購入履歴に助けられ購入できるようだが、購入履歴のない薬品はオンラインで購入す ることができない。

今季、ひどいかぜをひいた。かぜで熱なんかほとんど出ることはないのに、ものすごい高熱が出た。インフルエンザではなかったけれど、発熱直後はイ ンフルエンザの検査ができないとのことで、かぜによる熱でもインフルエンザによる熱でも、発熱直後に飲むとよく効く漢方薬を処方された。ものすごく穏やかだけどあっという間に熱が下がって感激した。特別にブレンドしたという感じの漢方薬ではなくて、普通にツムラの番号が付いているやつだったので、これは我 が家の常備薬にもってこいと思ったけれど、もう、漢方薬は宅配便で届かない。ほしいものがわかっているのに店に出向かなければならないなんて、非合理的な行動に思えてならない。

私が、本当に不便なんです!視覚障害者が店舗に出向くのは難しいんです!というように純粋に思えればよかったのだが、非合理的という思いとそれは 違うよなと考えているうちに、医薬品の通信販売継続の署名の募集が終わり、薬事法は改正され、だけどまだ続いている署名活動にも今だ参戦せずという今日で ある。

視覚障害を負った私がコンピュータに触れ、インターネットを知り、何がよかったって、情報収集と自由な購入活動ではなかったか。そのように自問すると薬事法改正に意見しなかった自分が情けなくてたまらない。しかし、私がWebアクセシビリティの向上を訴えていることに無関心な人々がいるように、薬事法にも私が無関心なままの問題があるかもしれないと思うと、安易に反対はできない。だけど、超のつく便利さがあってやっとインターネットの魅力をアピールでき、ユーザを増やすことができるという状況であるのだから、その属性の代表として、本当は声を上げるべきだったなあと反省している。

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