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アクセシビリティコラム

第124回 自治体サイトWebアクセシビリティ調査2017 を終えて(前編)

本年も自治体サイトWebアクセシビリティ調査をいたしました。調査に対する考えや結果に対する感想などを、前編・後編でお届けします。

テーマは『miChecker「問題あり(0)」 ≠ 問題なし』

本年のテーマは、『miChecker「問題あり(0)」 ≠ 問題なし』です。

「miChecker」という耳慣れない言葉が登場しました。miCheckerは、総務省が開発・公開しているウェブアクセシビリティの評価ツールで、JIS X 8341-3:2016(高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ)に基づくウェブアクセシビリティ対応の取組を支援するためのツールです。

ウェブアクセシビリティ評価ツールですので、このツールを用いてウェブコンテンツを評価し「問題あり」の検出数がゼロであれば、ウェブアクセシビリティが確保されていることになるのではないか、JIS X 8341-3:2016に準拠できていると見なせるのではないかと考える方もいるようです。ですが、総務省が第一の目的を「検証作業の支援」であることを明記していますし、miCheckerから得られる結果からも、ツールだけでは完全な検証が行えないことが見てとれます。

miCheckerによる検証結果のイメージ 問題箇所は「問題あり」「問題の可能性大」「要判断箇所」「手動確認」の4種に大別されます

miCheckerによる評価結果は、「問題あり」「問題の可能性大」「要判断箇所」「手動確認」の4つに大別されます。このうち「問題あり」は、機械的な判断でも問題であることが明らかなもの、「問題の可能性大」「要判断箇所」「手動確認」は、目視によって指摘事項を確認するよう求めているものです。

掲載している検証結果のイメージでは、「問題あり」はゼロですが、「問題の可能性大(6)」「要判断箇所(61)」「手動確認(36)」との結果が出ています。ですので、このウェブコンテンツのアクセシビリティを検証するには、100箇所ほどの問題(候補)箇所について、関連するJIS X 8341-3:2016の達成基準に照らして、確認・判断をする必要があることになります。

「問題あり(0)」が、ウェブアクセシビリティ品質を示すのか?

今回の調査は、例年どおり47都道府県と20政令指定都市の公式ウェブサイトを対象としました。これらのウェブサイトのトップページに対して、miCheckerを実行し「問題あり」がいくつ検出されるかを確認しました。前述のとおり、これだけでは検証は不十分ですが、少なくともツールレベルでの問題の有無は明らかとなります。そして、問題があろうとなかろうと、目視によって、実際のウェブコンテンツに潜む問題箇所の具体を明らかにすることを進めました。

今回の調査では、47都道府県中32団体(68.1%)、20政令指定都市中13団体(65%)が、「問題あり(0)」の結果を得ました。それ以外の団体も、数ヶ所の問題が検出されるにとどまり、どのウェブサイトも、ウェブアクセシビリティに対する取り組みは進んでいるように思えます。ですが、目視による調査では、ツールでは検出されない初歩的な問題も、相当数確認することができました。

具体的には下記のような点です。

  • 非テキストコンテンツに代替テキストが設定されているが、その内容が適切ではない
  • 背景と前景のコントラストが十分でない

前者は、主としてimg要素のalt属性に関する話です。alt属性の有無はツールで判断可能ですが、その値の適切性は、現状の評価ツールでは正確な判定ができないと思います。画像そのものに何が記されているかを正確に判定するだけでは不十分で、前後の文脈から、画像の代わりにおくべき文字列を正しく反映しなくてはならないからです。

そして、後者は、背景色と文字色のコントラスト比がJIS X 8341-3:2016で定める数値を満たすか否かを示すものです。JIS X 8341-3:2016では、コントラスト比4.5:1を最低限のコントラストとして定めていますが、背景と文字に同じような色が使われていたり、マウスオーバーした際にコントラストが低下したりといった例が認められました。

今回、上記以外の問題も合わせると、ほとんどの調査対象サイトで、何らかの問題が見つかりました。情報取得ができないといった重大な問題は少ないものの、「問題がない」と言うには躊躇してしまうケースが大多数です。

ツールはあくまでも支援にとどめるべき

miCheckerは、単一のページであれば、数秒で、問題の可能性のある箇所を抽出することができます。ですので、作成時期・作成者の異なる大量のウェブコンテンツを抱える自治体サイトでは、コンテンツごとの問題の傾向など、全体的な品質を特定するのには、miCheckerなどの評価ツールが大いに役立つと感じます。また、JIS X 8341-3:2016を理解していなくとも大雑把な品質がつかめるという意味では、異動がつきものの組織におけるメリットもあるでしょう。

ですが、ツールを実行することが、問題のすべてを確実に抽出できるものではないこと、検証(試験)の代替行為にはならないことを念頭に、検証作業の支援するツールとして活用していただきたいと思います。

とは言え、「みんなの公共サイト運用ガイドライン」では、今年度末までにレベルAAへの準拠を求めていますし、今年度、総務省が取り組み状況を調査することが明らかになっています。この状況では、「問題あり」だけはなくしておきたい。という気持ちも理解できます。

みんなが「とりあえず」を求めた結果、それがスタンダードになってしまうことは避けたいものです。

後編へ続く

(文責:代表取締役 清家順)

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