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アクセシビリティコラム

番外編:Webアクセシビリティ方針とは

Web Accessibility Advent Calendar 2013の12月18日分の記事です。

JISによると「策定しなければならない」ものらしい

日本におけるウェブアクセシビリティの唯一の公的規格「JIS X8341-3:2010(高齢者障害者等配慮設計指針-情報通信における機器・ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ)」には、

6 ウェブアクセシビリティ方針の確保・向上に関する要件
6.1 企画
企画段階においてウェブページ一式の責任者は、ウェブアクセシビリティ方針を策定し、文書化しなければならない。ウェブアクセシビリティ方針には、目標とするウェブコンテンツのアクセシビリティ達成等級を含まなければならない。
注記 ウェブアクセシビリティ方針は、ウェブサイトではサイト上、ウェブアプリケーションではマニュアル・パッケージなどで公開するとよい。

と書かれています。

JIS X8341-3:2010(以下、JISと記します)対応 = ウェブアクセシビリティ対応 ではありませんが、なるべくならJISに沿ってウェブアクセシビリティ対応を進めたい、あるいは、進めなくてはいけないという方もいらっしゃるでしょう。その場合、まず、ウェブコンテンツの企画段階において「ウェブアクセシビリティにどの程度取り組むつもりなのか」を定めましょう。そして、定めるだけではなくて公開するといいですよ。ということが書かれています。

JIS本文においては、アクセシビリティ達成等級を含める、つまり、「A」か「AA」か「AAA」かを選びなさいということだけ書かれていますので、例えば、

「ユニバーサルワークスのウェブサイトは、AAを目標とします。」

とだけ書かれていれば、6.1に示される内容を満たすことができそうです。

ですが、これを「方針」と呼ぶにはずいぶんとざっくりしていると感じるでしょう。「ユニバーサルワークスのウェブサイト」がどこなのか明確ではありませんし、いつまでにやるのか、どうやって進めるのかといったことが書かれていないからかもしれません。

方針に記しておくべきこと

では、どんなことを含めれば、それっぽくなるでしょうか。

私がどうすべきと論じなくても、「ウェブアクセシビリティ基盤委員会」が作成した「ウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン 2013年8月版」に答えが示されています。

そこには、明記すべき事項として、

  • 対象範囲
  • 達成等級及び対応度

明記するとよい事項として、

  • 目標を達成する期限
  • 例外事項(ある場合)
  • 追加する達成基準
  • 担当部署名
  • 現時点で把握している問題点及びその対応に関する考え方

が挙げられています。

ちなみに、国や地方公共団体など公的機関のウェブコンテンツについては、総務省の「みんなの公共サイト運用モデル(2010年度改訂版)」に示されている内容に合わせる方が良いでしょう。

「みんなの~」では、必ず含める事柄として、

  1. 対象範囲
  2. 目標を達成する期限
  3. 目標とする達成等級
  4. 例外事項(ある場合)
  5. 追加する達成基準

含めることが望ましい事柄として、

  1. 担当部署名
  2. 現時点で把握している問題点
  3. 現時点で把握している問題点への対応に関する考え方

が挙げられています。両者の項目はほぼ同じですが、「みんなの~」の方が、含めなくてはいけない事柄が多いことが見て取れます。

どのような方針が公開されているか

実際に公開されているWebアクセシビリティ方針を紹介したいと思います。せっかくなので総本山(?)である総務省のケースを見てましょう。

総務省ウェブアクセシビリティ方針

1.対象範囲
http://www.soumu.go.jp/ドメイン以下においてCMS管理下にあるウェブページ

いきなり物言いがつきそうな表現です。総務省のWebページを見ても「このページはCMS管理下です。」とは書かれていませんので、一般の閲覧者にとって範囲が明示されているとは言えません。ですが、これはWAICのガイドラインでは、OKな表現として認められています。

試験を行なう際には、URIなど特定できる表現をすることが必要ですが、方針の段階では、大丈夫です。

2.目標を達成する期限及び等級
2015年3月31日までに等級「A」準拠

「みんなの~」の発行者である総務省が自ら示した「2014年度末まで等級AAに準拠」という目安に沿っていないのが気になりますが、期限と等級(と対応度)が示されているので、方針の書き方としては何ら問題ありません。

3.アクセシビリティ対応の実施方法

アクセシビリティ対応として、以下のとおり毎年定期的にアクセシビリティ診断を実施し、当診断結果を基にした修正及びアクセシビリティガイドラインに則した運用を行い、目標の達成を目指すこととする。
なお、CMS管理下にないウェブページについては、CMSを用いたウェブページへの移行に努めることとし、移行作業に併せてアクセシビリティ対応を実施することとする。
(1) 機械診断
プログラムによる診断が可能な項目について、全ウェブページを対象に半期ごとに実施する。
(2) 目視及び操作診断
等級「A」の全診断項目について、「JIS X 8341-3」8.1.2 c)に基づき選択したウェブページを対象に半期ごとに実施する。

これは、総務省が独自に追加した内容のようです。

半年に一回前ウェブページを対象にするということは、
前回の診断で問題があった⇒
まだ修正しない⇒
同じページを再度診断(同じ問題が検出)

ということになるわけで、効率的ではないように感じます。

4 その他

(1) 例外事項
「JIS X 8341-3」8.1.3(第三者によるコンテンツにおける例外)に基づくもの
・修正用データが無い(修正できない)コンテンツ
・外部から提供されたサービス及び付随するウェブページ(検索結果出力ページ)
http://www.soumu.go.jp/schresult.html
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/result.html
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/kids/schresult.html
http://www.soumu.go.jp/schresult_e.html
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/hyouka/seisaku_n/schresult.html

この「例外事項」という表現は、JIS X 8341-3:2010の中にも、WAICの方針策定ガイドラインの中にも登場します。ですが、両者は似て非なるものです。

総務省の方針のように、前者と後者を混同している例が少なくありません。

前者は、「第三者によるコンテンツは、どんなコンテンツになるかわからないから、試験の時に外してもいいよ。」ということで、試験に関する事項です。「第三者が提供するサービスを利用して生成されるコンテンツ全体」ではなくて、「第三者が書いたもの」です。ブログのコメントなどが該当します。そこにどんなことが書かれるかは、管理者にはわからないので、それまで試験対象に含めなくてもいいというわけです。

総務省が書いているように、「外部から提供されたサービス及び付随するウェブページ」が例外になるとするならば、外部サービスを用いて情報を発信して、それをフレームで自サイトとして表示させることで、JIS準拠が簡単にできてしまうことになります。

検索や地図などでスタンダードな外部サービスがありますが、その仕様・品質には手を出すことはできません。なので、外したくなる気持ちはわからなくもありませんが、アクセシブルでない外部サービスを選択しなければいいということでもあるわけで、そこは認められませんよということになるのだと思います。

(2) 追加する達成基準

(略)

(3) 現時点で把握している問題点及び今後の対応に関する考え方

PDFファイルについては、W3C Working Group Note「PDF Techniques for WCAG 2.0」の翻訳が情報通信アクセス協議会ウェブアクセシビリティ基盤委員会実装ワーキンググループにおいて正式に公開されたのち対応方針を検討する。

これも、方針策定当時はどうかわかりませんが、翻訳版が公開された今となっては、首をかしげてしまう記述ですね。詳細はすでに複数の方が指摘されている通りです。

Webアクセシビリティ方針を公開するって素晴らしい

総務省が公開しているWebアクセシビリティ方針を元に、あれこれを書かせていただきました。これを読まれた方の中には、総務省が悪者になってしまった印象があるかも知れません。

PDFの扱いに限らず、方針の書き方として望ましいか否か、実装や運用に対して合うか否か、そういった判断がなされないまま、他サイトのコピペが散見される状況にあります。

私としては、せっかく方針を策定・公開するのだから、より取り組みやすいもの、より正確・誠実なものになってほしいとの思いから書いています。

Webアクセシビリティ方針を公開するにあたり、

  • 取り組んでいることは示したい(意志)
  • とは言え、あまり目標が低いのも格好がつかない(体裁)
  • 都合の悪い部分は外したい(現実)

という3つの思いが混ざっている状況があると思います。

WAICのウェブアクセシビリティ方針策定ガイドライン 2013年8月版では、改訂前と比べ、対象範囲の書き方に対する例示が増えています。当面対応できそうにない部分について、ディレクトリーや、ファイル形式や、作成時期などで絞り込むことが許容されているようです。

自サイトに対して、どのあたりからなら、アクセシビリティが確保できそうか、一度確認してみてください。テンプレートレベルでは問題がないという判断ができるのであれば、問題になりそうな部分を見つけてみてください。どの部署が作成するコンテンツなのか、いつごろ作成されたコンテンツなのかが見えてくれば、方針を文書化するのは難しいことではないと思います。

Webアクセシビリティ方針を公開するって素晴らしいと思うのです。

と書いておきながら、実は、ユニバーサルワークスのWebサイト自体も、2013年12月18日の時点では、Webアクセシビリティ方針を公開していません。今年中に、Webアクセシビリティ方針を公開することを表明して、この文章を閉じたいと思います。

ありがとうございました。

Web Accessibility Advent Calendar 2013の12月18日分の記事です。
有限会社ユニバーサルワークス代表取締役の清家が担当させていただきました。

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